翻訳・英語・ことば

# 漢字の話、二題

『新九郎、奔る!』の最新刊を読んでたら、見慣れない単語が出てきた。 新九郎、奔る! (16) (ビッグスピリッツコミックススペシャル) 作者:ゆうき まさみ 小学館 Amazon 度重なる寺社領返還の命に従わず、押妨〈おうぼう〉を繰り返す彼〈か〉の者に、余自ら…

# 『オタク用語辞典 大限界』vs 国語辞典

前回、『意味変語彙力帳』をネタにして国語辞典を比較したら baldhatter.hatenablog.com 思いのほか愉しかったので、今度は昨年出版されて話題になった『オタク用語辞典 大限界』をネタにしてみました。 オタク用語辞典 大限界 作者:名古屋短期大学小出ゼミ(…

# 大久保さんのEPWING、復活!

うれしいお知らせです! 大久保克彦さんが公開なさっていた自作のEPWINGデータ。しばらく前から公開が止まっていましたが、このたび、翻訳フォーラムがそのデータを譲り受け、あらためて公開いたしました。 大久保EPWING アーカイブ presented by 翻訳フォー…

# これかぁ! 「~を~をする」構文!

ひとつ前の記事は、もちろん趣味で書いたのですが、実はこのニュースを見たとき、ある箇所で これかぁ! と、文字サイズ200%くらいの音量で叫んでしまいました。 kbc.co.jp このページに文字も載っているので引用します。 映画全盛時代、1日に1万人以上を…

# 言葉の通用度を決めるのは難しい

togetterのこの記事が、FacebookにもTwitter(現、X)*1 にも流れてきたので、ネタにします。 togetter.com 元投稿は「まだGoogleも無い時代」だったそうで、今だったらどの国語辞典にも載ってるよね~、犬猫あわせた飼育数は1600万頭に近いっていうんだから…

# OEDに最近追加された日本語 - 今回はトンカツ推し

Oxford English Dictionary(OED)のニュースレターによると、この3月には1,000以上の新語が追加されたとのことです。 Update - March 2024 また、そのうち日本語から追加された単語については別途の記事があります。 Words from the land of the rising sun…

# 『意味変語彙力帳』をネタに国語辞典を比較

すこし前に書店で見つけて、こんな本を買っていました。 意味変語彙力帳 総合法令出版 Amazon 結論からいうと少し期待外れだったのですが、せっかくなので、この本をネタにして手元の国語辞典を比較して遊んでみました。 ●発端 ●調査方法 ●あらためて分かっ…

# 『イーロン・マスク』超高速翻訳の舞台裏~翻訳フォーラム・おうちでレクチャー第2弾~

翻訳フォーラムがオンラインでお送りする「おうちでレクチャー」シリーズ。 高橋さきのさんの『アカデミック・フレーズバンク』を取り上げた第1弾は先月、盛況のうちに終了しました。 第2弾はこちら、4月20日です。 『イーロン・マスク』超高速翻訳の舞台裏…

# exploit について

IT系の文脈、特にセキュリティ関連の内容に慣れている人なら、今さら何ということのないこの単語ですが、見慣れない人にとってはなかなか厄介なようです。 Along with the tremendous progress in Internet technology in the last few decades, the sophist…

# アビリティ・インタービジネス・ソリューションズのスクール開講

私がフェロー・アカデミーで「IT・マーケティング」というコース(中級、上級)を担当していることはだいぶ知られていると思います。 実はそれ以外にも、広島に本社を置く翻訳会社、アビリティ・インタービジネス・ソリューションズで毎年開講しているスクー…

# 「通訳翻訳ジャーナル」2024年春号、雑感

久しぶりに、イカロス出版の「通訳翻訳ジャーナル」に記事を書きました。表紙でわかるとおり、辞書と調べものの特集です。 通訳翻訳ジャーナル2024SPRING イカロス出版 Amazon 私の記事はpp.24~27。おすすめ辞書の一覧も、2024年1月時点の価格情報付きでど…

#『校閲至極』日記、その12

昨日は、9日に行ったばかりの旧岩崎邸庭園を再訪しました。 旧岩崎邸庭園には、本館のほかに撞球室というのが建っていて、本館とその撞球室はなんと地下道でつながっています。地下道も撞球室内部もふだんは非公開なのですが、毎月15日に開かれるガイド付き…

#『校閲至極』日記、その11

なんか、今日あたりからだいぶ暖かくなるみたいですね。先週の金曜日、東京国立博物館からそのまま足をのばして、旧岩崎邸庭園から湯島天神まで回ってみましたが、梅がだいぶ咲いてました。 【初稿で「足を伸ばして」と書いていた誤字をご報告いただきました…

#『校閲至極』日記、その10

昨日(2/11)は、ほぼ40年ぶりの『ストップ・メイキング・センス』 gaga.ne.jp と、ドリパスで上映が成立した『グリッドマンユニバース』を観られて、とてもいい日でした^^ ■ 「名前の間違いはメジャーな方へ」(p.196~)より 皆さんは名前を間違えられたこ…

#『校閲至極』日記、その9

ちょっと別の記事が続きましたが、そろそろこちらも再開しましょう。全253ページのうち前回が189ページからだったので、もうすぐ終わりです。 ■ 「虎○門、霞○関、丸の内の○は?」(p.192~)より 中でも超高層ビルの代名詞として知られる「霞が関ビル」は196…

# 『英英辞典の底力』~英英辞典指南の良書~

英語学習者(主として高校生、大学生)向けでありながら翻訳者にも役に立つ英語辞典指南書は何冊かありますが、英英辞典についての良書を読んだので、ご紹介します。 英英辞典の底力 -- TOEIC®・英検®対策のニュースタンダード (「底力」シリーズ 15) 作者:…

# 『アカデミック・フレーズバンク』の使い方~翻訳フォーラム・おうちでレクチャー第1弾~

告知が遅くなりましたが、元旦の記事で書いたように、今年は翻訳フォーラムのイベントが目白押しです。 baldhatter.hatenablog.com 最初は、「おうちでレクチャー」第1弾として、高橋さきのさんの訳書『アカデミック・フレーズバンク』を取り上げます。 2月2…

# フェローの辞書セミナー(録画配信)、セット販売スタート

フェロー・アカデミーで、私が担当している録画形式の辞書セミナーが配信されていることは、もしかしたらこのブログで書いてなかったかもしれません……。 「翻訳者のための辞書セミナー ~辞書の読み方、使い方~」 「翻訳者のための辞書セミナー ~英英辞典…

# 資料の調査と、自分の言語感覚と―「向上される」をめぐって

「向上する」 という日本語は自動詞のみで他動詞はない。だから「英語力が向上する」とは言うが「英語力を向上する」とは言わない ―― ずっとそう思ってきたし、見かければ修正してきた(QA/レビューでも、授業などでも)。 実際に目にする機会はそうないのだ…

#『校閲至極』日記、その8

安心してください、続いてますよw こんな風に読書日記をたらたら続けるのは、自分の読書日記も兼ねられるので、なかなかいい感じです。 さて、今回は「濁るか濁らないか」がテーマです。 ■ 「折口、柳田……清音の地域性」(p.186~)より 一般に固有名詞は東…

#『校閲至極』日記、その7

前回の「その6」を書いたのは、翻訳祭のオンラインプログラム開始前日でしたが、全日程が昨日で終了しました。そして、本日からはプログラムのアーカイブ配信も始まります。チケット販売は終了しましたが、チケットをご購入になった方は、引き続きアーカイブ…

#『校閲至極』日記、その6

翻訳祭の会場開催は終了しましたが、オンラインプログラムは明日11/8(水)から始まります! www.32jtffestival2023.com ということで、『校閲至極』日記その6です。 ■ 「ろくろを「ひく」挿絵を見て納得」(p.152~)より 現代の私たちが知っている「ろくろ…

#『校閲至極』日記、その5

いよいよ、JTF翻訳祭が明後日に迫りました。 ということであまり時間がないので、5回目ですがネタはひとつだけ。 ■ 「コロナ「差別」に言葉であらがう」(p.136~)より 同様の例に、「感染が発覚した」という表現がある。「発覚」は「隠していた悪事・陰謀…

#『校閲至極』日記、その4

ネタにしている本も軽いノリなので、記事も気楽に続けられるようです。 ■ 「「コンビ二」に立ち止まれ」(p.82~)より [パソコンの]学習能力によっては「コンビ二」と出る。「コンビ」と「二」を分けて変換してしまうのだ。 カタカナ語の一部にカタカナ以…

#『校閲至極』日記、その3

その3まで来ました。これで終わったら、まさに三日坊主。 ■ 「広辞苑に載った「エロい」に興奮」(p.76~)より しかしまさか『広辞苑』で「エロい」が見出し語になるなんて! 2018年発売の第7版で初めて入ったのを発見し、年がいもなく興奮しました。 それ…

# 新しい訳書、『ハッキング思考』

新しい訳書が出ました(日付を勘違いしてたので、過去形)。 ハッキング思考 強者はいかにしてルールを歪めるのか、それを正すにはどうしたらいいのか 作者:ブルース・シュナイアー 日経BP Amazon 原著者は、なんと、あのブルース・シュナイアー大先生です。…

# 「翻訳グランプリ」の再考を請う

※はじめにお断りこのブログは、たまたま翻訳という職業に就いている個人が、翻訳と翻訳まわりについて自分の知識やノウハウを紹介したり、翻訳とは関係なくブログ主の日常や趣味を綴ったりする場である。ブログ主は、これもたまたま翻訳関連の団体で理事を務…

# JTFジャーナル連載「正規表現講座」

正規表現については、旧ブログでも何回か取り上げており、また3月に出た拙著でもかなりのページを割いて説明しています。 1秒でも長く「頭」を使いたい 翻訳者のための超時短パソコンスキル大全 作者:高橋 聡 KADOKAWA Amazon そして、今回は日本翻訳連盟(J…

# 新しい訳語の変化~Generative AI

アメリア会員の方には、会員向けの月間誌『Ameria』10月号が届いていることと思います。 10月号には、私が担当している「定例トライアル<IT・テクニカル>」の課題文が掲載されています(p.16)。そして、そのページにある「課題について」という囲み記事に…

# 今年のJTF翻訳祭はハイブリッド開催

(いかんですね。また1か月以上も記事を書いてませんでした) 少し遅くなりましたが、日本翻訳連盟(JTF)が主催するJTF翻訳祭、今年はようやく、ついに、とうとう、やっと、リアル開催が実現します。ただし、オンラインプログラムもある、いわゆる「ハイブ…