# ネットで "ことばの違い" を調べたら―

ひとつ前の記事に書いたように、「辞書」と「辞典」にはおもしろい違いがあるわけですが、さて、これをネットで調べたらどうなるかという話も書いておきます。

www.google.co.jp

トップには、しばらく前から Google 検索に実装された「AI による概要」が出てきます(邪魔でしかたがない。これを消す方法もあるようなのですが、いろいろうまくいかないこともあり、道なかばです)。

これ、どう思います? 正しいことも書かれていそうですが、意味不明な内容とかウソも含まれていますよね*1

ところで、各パラグラフの最後にリンクアイコンが表示されるのはご存じですか? 検索結果の右側にソースの一部が表示されていて、それと連動しています。

このソースも見ながら検証していきます。

*1:現状の生成AIの実力を測ろうと思ったら、こうやって〈自分がよく知っていること〉を調べるとよくわかります。

続きを読む

# 辞書と辞典

次の日曜日に開催される「辞書の揃え方・使い方 超基本編」、お申し込みは本日までです! 詳細は以下の記事にあるリンクからどうぞ。

baldhatter.hatenablog.com

また、どんな話になるのかもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

baldhatter.hatenablog.com

こちらの記事でもお伝えしているとおり、今回は参加特典として「辞書を活用するための用語集」をお配りします。それがどんな内容になるのか、ひとつだけご紹介しようというのがこの記事の趣旨です。

 

dictionary のことを、日本語では「辞書」とも「辞典」とも言います。これの違いは何なんでしょうか?

ちなみに、ネットで "辞書 辞典 違い" などと検索しても、たいした結果は出てきません。この話は、余録としてあらためて記事にします(たぶん)。

続きを読む

#『死ぬまで使わない日本語』日記、その4

今日から師走。映画を2本ハシゴしてきました。どちらも、1980年代の公開時に見て以来です。1本目は、恵比寿ガーデンシネマでこれ。

gamenokisoku4k.jp

いたって良質なスラップスティックで、こういうリズムは大好きです。ただ、もっとヨーロッパ演劇の素養があるともっとよく理解できるんだろうかと思ってみたり。

2本目はシネ・ルーブル池袋に移動して、こちら。

usagi-movie.jp

公開当時は日本語吹き替えのみで、それはそれで悪くなかったのですが、のちに輸入盤のビデオを入手して初めて、主人公ヘイズルの声が John Hurt だというのを知りました。今回は、その英語版を初めてスクリーンで鑑賞。この作品の原作(リチャード・アダムス)も、高校生のころに初めて読んで以来、『指輪物語』と並ぶわたしの愛読書です。

では、日記のその4。引き続き第1章から。

続きを読む

#『死ぬまで使わない日本語』日記、その3

昨日は、11月の遊び納めとして日帰りで箱根に行ってきました。

絶好の行楽日和で、箱根のメジャーなスポットはたいそう混んでいたそうな。でも、今回の目的地はそういう喧噪とは無縁の別天地、「天山湯治郷」。

とにかく「良質なお湯に入って癒やされる」ことだけを目的とした施設。このなかだけで源泉が5つあり(最近2つ増えたとか)、泉質加水・加温していないアルカリ単純泉。しかも塩素消毒していない(銀イオンを使うらしい)というお湯が、からだの深くまでしみこみます。

紅葉はまだこれからでした(今年はちゃんと色づくのだろうか……)。

飲食には贅沢をせず、小田急ロマンスカーのなかで行きも駅弁。

帰りも駅弁(プラス、ビールとおつまみ)。

だいたい、列車に乗って、駅弁食べて、温泉に入ったら、それでもう小旅行は完成なのだ。

というところで、日記のその3です。引き続き、

第1章「見かけも意味も不可解な言葉」(pp.11~52)

からお届けします。

続きを読む

#『死ぬまで使わない日本語』日記、その2

この週末と週明け(11/24~25)は、日本翻訳者協会(JAT)のイベント「Project Nagoya 2024」と、自分がしゃべる Human Powered 勉強会に出かけていたので、日記が途切れてしまいました。

というわけで、その2も引き続き、

第1章「見かけも意味も不可解な言葉」(pp.11~52)

からお届けします。

やかんで茹でたタコ ×

これはもう、面堂終太郎が激怒する絵しか思い浮かばない。

 

行徳の爼△

どんな文脈だったか忘れたが、これはウチの夫婦の会話で出てきたことがある。のだが、これって、わりとどこを見ても漱石からのこの引用しか出てこないのだ。

吾輩は猫である〔1905~06〕〈夏目漱石〉二「迷亭君は気にも留めない様子で『どうせ僕抔は行徳の爼と云ふ格だからなあ』と笑ふ」

(引用は日国@ジャパンナレッジより)

さすがに、漱石のまったくの独走もとい独創とは考えにくい。『日本国語大辞典』第3版の編集に向けて、ぜひこれ以前の引用を掲載してほしい。

www.shogakukan.co.jp

 

ジャーゴン○

これはもう、ほぼ日常語に近い。そして、ジャーゴンといえば、IT 界隈の方ならすぐに連想するのが Jargon File だろう。「ハッカー俗語辞典」と説明されることも多いが、どうして普通の IT 用語でも意外と役に立つ。

www.catb.org

これの EPWING 版データ、探せば今でもあるだろうか……。

 

欠け字△

『死ぬまで使わない日本語』では、

欠け字とは、高貴な人に敬意を表するために、一部を省略した字のことだ。

と説明されているが(p.22)、もちろんそれだけではない。日国では、以下のように説明されている。というか、以下の意味しか立項されていない。

文章や印刷物で、文字、また、その一部が欠けていること。また、その文字。落字、欠画の類。けつじ。

同じジャパンナレッジから『デジタル大辞泉』を見るとこうある。

1 文章・語句中で、文字、また、その一部が欠けていること。また、その文字。欠字(けつじ)。
2 「欠画(けっかく)」に同じ。

『死ぬまで使わない日本語』が「欠け字」として立項しているのは、この「欠画」と同じ語義のほうだが、「欠画」もやはり "死ぬまで使わない日本語" の部類かもしれない。

 

ぎなた読み○

これは普通に使う。ところで、これの説明には必ず

「弁慶が、なぎなたを持って」

という文が引かれるのだが、さて、ではこのフレーズの出どころはどこなのかという説明には出会ったことがない。むしろ、それを知りたい。江戸時代の通俗読み物あたりだったのだろうか。

 

というところで、名古屋の記録を少しだけ。

JATのイベントに参加したのは久しぶり。翻訳関係で名古屋に来たのは、2019年に中部大学の関山健治先生の研究所を訪れたのを別とすれば、2013年と2016年の2回。にもかかわらず、ご当地の同業者は驚くほどわたしのことを覚えていてくれた。初めてお会いした方は、ほぼ決まって「PCスキル大全、買いました」「読んでます」と声をかけてくれて、なんともありがたい限り。

夜の部は「風来坊」というお店。わたしは初めてだったが、知っている人によりと、手羽先は「世界の山ちゃん」よりこちらがお薦めらしい。

翌日の「Human Powered 勉強会」は、平日にもかかわらず、こぢんまりながらなかなか活気があった。

最後は、ちゃんと新幹線ホームのきしめんでしめました。

 

#『死ぬまで使わない日本語』日記、その1

昨年の10から今年の2月まで、毎日新聞出版社の『校閲至極』をネタに全12回の記事を書きました。

baldhatter.hatenablog.com

こういうネタ本がひとつあると、記事を続けていくのに便利です。先日また格好のネタを見つけました。

同じ筆者のこちらの本も、まずまず楽しい本です。

「死ぬまで使わない」というのはもちろん大げさで、実際には「使ったことがある」「わりといつも使っている」言葉もあったりします。特に、同業者であれば「仕事には使ったことがある」語彙もいろいろありそうです。

そこで、さっそくこの『死ぬまで使わない日本語』に出てくる言葉で遊んでいきたいと思います。もちろん、『校閲至極』のときと同様、すべて取り上げるわけではありません。ついでなので、取り上げた語句については

 ・見たことも聞いたこともない ×
 ・聞いたことはある △
 ・わりといつも使っている ○
 ・翻訳に使ったことがある ▲

くらいにざっくり分類もしてみました。

続きを読む