ひとつ前のエントリで、久しぶりにLogoVistaを話題にしました。
こちらの記事にいただいたコメントで知りましたが、研究社『ライトハウス英和辞典 第7版・和英辞典 第5版』も9/2にリリースされました。同業者にぜひおすすめというほどではありませんが、ライトハウスも電子化は初めてです。先日の『三省堂国語辞典』や『熟語本位 英和中辞典』も「電子化の前例が少ない」タイトルでしたが、ライトハウスは、おそらく業界初です。電子辞書端末に収録されたこともなく、教育機関向けのサブスクリプションサービスなどでも未対応だったと思います。
これだけ充実してくると、翻訳者ご用達の辞書を
- これからLogoVistaでそろえる
- 手持ちにない分をLogoVistaで補う
という選択肢も十分に視野に入ってきます。そうなると、使い勝手がイマイチとはいえ、LogoVistaの新アプリについても簡単に紹介しておく必要がありそうです。
【2024/10/5 追記】
公開した記事で、「Logophile」とすべきところを誤って「LogoVista」にしている箇所があり、コメント欄でご指摘いただきました。ありがとうございます、修正しました。
●全体的なインプレッション
まず、新旧のLogoVista辞書アプリケーション画面を並べてみます。
これ ↑ が旧アプリケーション。
こちら ↑ が新アプリケーションです。
旧アプリは、Windows 95時代かと思いたくなるくらいの古めかしいインターフェース。機能はそれなり用意されていたものの、
- 串刺し検索はできるが、かなり遅い。
- 辞典ごとの切り替えも、だいぶもっさりしている
等々の大きな欠点がありました。一方、新アプリのほうはだいぶ見た目がすっかりしましたが、実はそれに比例して機能もあっさりしてしまい、いろいろとまだ不完全です。それでも、2年ちょい前に書いたこの頃よりはだいぶマシになってきました。ゆっくりですが、着実な進歩を感じます。
●串刺し検索―なんとか合格レベル
【プラス】
上に書いたように、旧アプリでは串刺し検索の動作がイマイチでした。新アプリでは、他の辞書ブラウザ(EBWin4や、かつてのJamming/Logophile)とほぼ遜色なく全辞書を検索できます。
【マイナスその1】
今は辞書のグループ化機能が(まだ)ないため、常に全辞書の串刺ししかできません。グループ化は、今いちばん実装してほしい機能です。ただし、旧アプリにはその機能があったものの、グループを切り替える動作が実用にならないくらい遅かったので、そうはならないことを希望します。
【マイナスその2】
また、検索した結果のリストが左カラムに、本文が右に表示される点は他の辞書ブラウザと同じですが、グループ化がなく全辞書の全候補が表示されるため、目的の辞書の目的の項目を探すのがけっこう手間です。不要な辞書は、下の図の▼で開閉できるので、この機能を使うと少しはマシになります。
実は、リスト表示部の仕様は他の辞書ブラウザでもさまざまで、決定打はありません。Jammingでは、初期状態で表示される項目数を指定でき、そのうえでツリーを展開することができました。後継のLogophileになると、初期状態ではヒットした辞書名のみが表示され、▶をクリックすると項目が表示される形式になり、これも便利でした*1。
EBWin4でもすべての結果が表示されますが、表示が ↓ こんな感じに簡素なので、スクロールして見つけるのは簡単です。
大きな違いは、辞書名の示し方。EBWin4の形式だと辞書名も常に表示されているので、スクロールしていって目的の項目を見つけるのは簡単です。ところが、LogoVistaの左カラムでは、辞書名と項目が同列に並んでいるので、スクロールすると辞書名が見えなくなってしまうのです。LogoVistaの開発チームさんって、こういう先発の類似ソフトウェアを参考にしたりしないのでしょうか。がんばってください!
【後刻追記】
なので、ふだん辞書ソフトを使うときは「前方一致検索」を常用していますが、LogoVistaに限っては「完全一致」を使うほうがよさそうです。
【マイナスその3】
というか、そもそもデフォルトが串刺し検索のみで、他の辞書アプリのように最初から特定の辞書に限定して引くという使い方ができません。これ、串刺し検索という手法を勘違いしている気がします。
●タブ表示
【プラス】
タブ表示の機能が増えました。EBWin4にもある機能です。上に書いた「マイナス2」と「マイナス3」は、これを使うと補えます。最初から特定の辞書のタブを選択しておいて検索すればいいわけです。
【マイナス】
複数のタブを開いた状態で串刺し検索しても、個々のタブの内容は新しい検索語に切り替わるわけではありません。ただし、この動作はEBWin4でも同じです。
●全文検索
【プラス】
これは、超おすすめできるようになりました。全文検索はかなり高速です。Logophileのようにかなりデカいインデックスを最初に作成しているわけでもなさそうなので、しくみは不明です。また、どんなレベルでインデックスが作成されているのか分からないので、精度までは確認できていません。
実は、全文検索に限らず、新アプリを起動した直後、初回の検索だけはちょっと時間がかかります。そのとき一時的にインデックスを作成しているのでしょうか(それにしては、そこまで時間はかかりません)。中の人に訊いてみたいものです。
●辞書固有の機能
【プラス】
これも、良くなったといえる機能です。[辞書固有の機能を開く]というのがあって、これを使うと辞書ごとに用意されている〈前書き〉や〈凡例〉――私が、ぜひ見ておいてほしいと力説している箇所です――、各種の付録を見ることができます。
たとえばこれは、[辞書固有の機能]で『明解国語辞典 第三版』を選び、付録を見ている画面です。明鏡をお持ちの方、ここに見えている「重言のいろいろ」をぜひご覧ください(LogoVistaではなく、物書堂版とかDONGRI版でももちろん見られます)。
●その他の機能
【今後を期待】
[設定]から操作できるのは、辞書の並べ替え、フォントの種類とサイズ(辞書の設定を優先する機能も含む)、タブ機能の設定だけです。画面の色を変えるとか、少なくともかつてあった機能くらいは実装してほしい。この辺は、今後のアップデートを期待というところでしょう。
ということで、これからはLogoVista環境もできるだけ積極的に使っていく予定です(三国が入ったので、使わないという選択肢はなくなった)。何かまた進展や発見があったら記事にします、たぶん。
*1:JammingもLogophileも公開は終了しています