# 「通訳翻訳ジャーナル」2024年春号、雑感

久しぶりに、イカロス出版の「通訳翻訳ジャーナル」に記事を書きました。表紙でわかるとおり、辞書と調べものの特集です。

私の記事はpp.24~27。おすすめ辞書の一覧も、2024年1月時点の価格情報付きでどーんと載せていただきました。その価格情報も含めて、これから辞書環境をそろえるなら、という観点でまとめてあります。

ただし、しっかり読んでいただきたいのは「辞書環境を再考する」と題したセクションです。私自身も、辞書環境については考え方が少しずつ変わってきています。今の時点で私が考えていることを書いてみました。

ところで、同誌のpp.42~43には、読者アンケートの結果から、「翻訳者の愛用辞書」というランキングが載っているのですが、ここでちょっと気になることがありました。

英英辞典のセクションでは、1位が

Oxford Advanced Learner's Dictionary(OALD:オックスフォード現代英語辞典)ほかOxfordの辞書(47人)

となっています。学習英英辞典と一般英英辞典を「ほかOxfordの辞書」などというくくりでひとまとめにしてしまうのは、どうなんでしょう。その下に書いてあるコメントを見ても、詳しくない人は混乱するだけです。

●OALDは学習者向けなので説明がわかりやすい
●Oxford Learner's Dictionary of Academic Englishは(以下略)
●英語辞書界の最高峰。オンライン版は新語にも意外なほど強い

2つ目はまだ "Academic" と辞書名が出てくるので救われていますが、3つ目はOALDが 「英語辞書界の最高峰」であって「新語にも意外なほど強い」のかと思ってしまいそうです。

わかる人にはわかるのですが、これは言うまでもなくOEDOxford Englsih Dictionary)に関するコメントです。ってか、これ書いたの、たぶん私^^; まとめてしまうのは、無理ありませんか?

まとめてあるのは2位も同じです。

Collins COBUILD English DictionaryほかCollinsの辞書(47人)

とあって、こちらもやはりコメントで混乱します。

●辞書としてだけでなく文法、使い方、類語がわかる
●センテンス定義がそのまま訳語のヒントになることも多い

どちらも、COBUILDに関するコメントのはずで、「ほかCollinsの辞書」、つまり一般英英辞典であるCollins English Dictionaryには当てはまりません。Collinsは、オンラインでどちらも引けるので、いま見ている情報がどちらなのか、ちゃんと区別しましょう。

https://www.collinsdictionary.com/

こちらが、すぐに出てくるCOBUILDの定義。センテンス定義で、類義語なども載っています。

そのまま下にスクロールするか、ドロップダウンから辞書を選ぶと、一般英英の内容が現れます。

↑ これがイギリス語のセクション。さらに下にスクロールすると、アメリカ語のセクションもあります。

辞書の特集といえば、一般辞書と学習辞書を使い分けるといった話はたいてい出てきます。その特集の一角にある情報がこれというのは、ちょっと残念な気がしました。

それから、国語辞典のトップが『広辞苑』(34人)というのは驚きでした。いや、前回もそうだったかな。みなさん『広辞苑』を使いこなせてるんですね。すごいなぁ……

その順位とは別に

国語辞典は、とくに複数の辞書の「読み比べ」をするという人が多かった。

というひと言が付いているのはうれしいですね。国語辞典の大切さが、だいぶ浸透してきているのでしょうか。でも、その一方で

「ネット検索で事足りる」という人も30名程度いた。

これにはもっと驚きました。国語辞典なくて済むって、語彙の貧弱な私には、羨ましい限りです。