ひとつ前の記事は、もちろん趣味で書いたのですが、実はこのニュースを見たとき、ある箇所で
これかぁ!
と、文字サイズ200%くらいの音量で叫んでしまいました。
このページに文字も載っているので引用します。
映画全盛時代、1日に1万人以上を動員をする日もあるなど、戦後の中洲の賑わいを支えてきましたが、建物の老朽化などによって取り壊しが決まり、31日が最後の営業日となりました。
ん? んん?「1万人以上を動員をする……」
私の引用ミスではありません。上のページの誤字でもありません。動画を見るとしっかり、アナウンサーが
1万人以上を動員をする
と言っています(字幕でもそうなっています)。「1万人以上を動員する」ではなく「1万人以上を動員をする」です。
変なところに「を」が入るこの言い方、実は最近だいぶ増えているそうなんですが、皆さん、ご存じでした?
たとえば、「駅前開発を再開します」ではなく「駅前開発の再開をします」と書かれている例を見るのは、それほど珍しくありません。つまり、「~を再開する」とサ変動詞にすれば済むところを、わざわざ「再開」(=サ変動詞の語幹)を名詞化して「~の再開をする」と書いているわけです。たぶん、「駅前開発の再開」という名詞句のまとまりを使いたいと、こういう形になるのでしょう。
この形でさえ、個人的にはまず使いません。翻訳学校の授業などでも、あまり目につくと、「非推奨」くらいに伝えることがあります。
でも、上のニュースのは、これとも違います。サ変動詞を使うとしたら「○○を動員する」、つまり「1万人以上を動員する」という形になる。これが、上に書いたような現象(サ変動詞の語幹を名詞化する)を起こしたのであれば、「1万人以上の動員をする」になったはずです。
ところが、上の言い方は「を動員」はそのままにして、「する」の前に、いったいどういうわけかさらに格助詞「を」を入れて、「○○を動員をする」という形にしているのです。
これは、かなり気持ち悪い。
実はこの現象、自分で遭遇したのは今回が初めてです。先に、以下の本で知識として仕入れていました。
著者が同じなので、内容はかなりかぶっていますが、このどちらでも、サ変動詞の途中に「を」が入る「を入れ」現象が紹介されています。
著者の野口恵子さんによると、どうやら政治家の発言に多いのだとか。
「来月サミットが開催をされます」
「ビジョンを民主党さんにもお出しをいただきたい」
「このたび外務大臣を拝命をいたしました」
といった例があったそうです。
これを読んだときには、そんなこと本当にあるのかしら、くらいに思っていたのですが、現にテレビニュースの原稿にそう書かれ、アナウンサーもそのとおりに読んでいるところを、ついに目撃してしまいました。
言葉は変化するもの。それは分かっていますが、こういうのは定着せずに消えてほしいなあ。本当に政治家由来だとしたら、ますますイヤだ。