プログラム紹介、その9まで来ました。
個人的にかなり楽しみにしているプログラムです。
・10/25(金)15:30~17:00
・森口稔さん(長浜バイオ大学 非常勤講師)
・「日本文化としてのマンガと妖怪:辞書学の視点を交えて」
森口稔さん、もしかしたらご存じない方もわりといらっしゃるかもしれません。現在の主なお仕事は大学の先生ですが、概要ページにもあるように、テクニカルライター、翻訳者、機械翻訳開発者など、いろいろな顔をおもちです。一方で、『三省堂国語辞典 第七版』や『ジーニアス英和辞典 第5版』など、私たちがふだんからお世話になっている辞書の執筆・校閲にも携わっていらっしゃいました。
テクニカルコミュニケーター協会(JTCA)の年次イベント「TCシンポジウム」に参加したことがあれば、そこで講演を聴いたことがあるかもしれません。
が、なによりも、こちらの辞典の編者というのが、今回の講演には関係してきます。
(こちらのリンクは書籍版ですが、つい最近Kindle版もリリースされました)
翻訳祭の金沢開催が決まり、テーマもほぼ固まったころ、さっそくお声をおかけしたひとりが森口さんでした。それはひとえに、この辞典のことが念頭にあったからです。上に書いた履歴を見るだけでも、もともと翻訳業界と縁が深いことは言うまでもないのですが、ぜひともこの辞典にまつわる話をしていただこうと思ったのです。
ちょっと長くなりますが、概要から引用します(太字は引用者)。
日本文化の根底にある精神的要素として、自然崇拝、集団志向、詳細主義、非言語コミュニケーションを挙げる。(中略)さらに、その精神的要素の発現の一つであるマンガを取り上げ、辞書に見る定義を手掛かりに、東大寺正倉院に残された『大大論落書き』から、200巻を越えてなお発行され続ける『ゴルゴ13』まで、マンガの歴史を辿る。最後に、マンガの人気テーマの一つである妖怪について、生成AIがどの程度英語で説明できるかについて考察した研究を紹介する。
なんかもう、ワクワクするキーワードがてんこ盛りじゃありません?
マンガとか妖怪とか、お前の趣味だろうって? ええ、そうですともw
でも、マンガも妖怪も、日本が誇る文化現象であることは間違いないですよね。そのふたつを、「辞書学の視点」でお話しになるというのですから、絶対おもしろいに決まってます。
以下、この辞典のことを少し詳しく紹介します。
『英語で案内する 日本の伝統・大衆文化辞典』、英語タイトルは
A Dictionary of Japan in English
なので、頭文字をとってDOJIEと略されます。これを森口さんは「どうじ」と呼んでいるんだそうです。
簡単な雑用を言いつければ,飛んできてさっさと片付けてくれる小さな子ども。多くの文献を調べずとも,とりあえずの説明ができる手軽な辞書。本書に対してそんなイメージを持っていただければ,この上ない幸いである。(はじめに、p.vより)
日本の伝統とか文化を紹介するための本や辞典って、類書はいろいろありますが、本書は「大衆文化」です。ア行~カ行だけから、載っている項目の例を挙げると、その意味がわかります。
あかかげ 赤影〔忍者〕
いがのかげまる 伊賀の影丸〔忍者〕
がごぜ 元興寺〔妖怪〕
くまもん くまもん〔ゆるキャラ〕
こだま 木霊〔妖怪〕
こんな具合です。だから、今回の講演のタイトルも「日本文化としてのマンガと妖怪」なわけです。もちろん、全部がこういう項目なのではなく、その近くには
あかがみ 赤紙〔戦争〕
いかどっくり 烏賊徳利〔酒〕
かごめかごめ かごめかごめ〔遊び〕
くまもとじょう 熊本城〔城郭〕
くもすけ 雲助〔交通〕
こたん コタン〔少数民族〕
ごだんかつよう 五段活用〔言語〕
など、ふつうの項目もたくさん載っています(総項目数は8600)。実際にどんな風に説明されているのか、一例だけ挙げておきます。
実は私、これを見てはじめて「こうが」ではなく「こうか」であることを知りました。この読み方と上に挙げた「がごぜ」の話は、以前も記事にしました。