# 翻訳者の辞書環境は物書堂の時代か

物書堂の辞書ラインアップが、これ以上ないというくらい充実してきた。現時点でも、ひとつの辞書プラットフォームとしての充実ぶりは、他社サービスを圧倒的にリードしており、翻訳者として辞書環境を考えるときにも、最有力候補と言えるだろう。

まず、つい先日『ジーニアス英和大辞典』が発売されて、ついに三大英和大辞典がすべてそろった。www.monokakido.jp

立て続けに、『研究社 新和英大辞典』もリリースされて、研究社の英語系大辞典の双璧がそろった。www.monokakido.jp

ちなみに、ジーニアスは1/7まで7,000円(通常価格10,000円)、新和英大は1/16まで10,000円(通常価格14,000円)で特価セールス中。

充実しているのは、英語だけではない。

12月17日に出たばかりの『三省堂国語辞典 第八版』も、近々ラインアップに加わる(以下のリンク先は書籍版)。

しかも、今回の三国は「削除された語」が妙にニュースになっているが(これって、三省堂さんの巧妙なネガキャンなのでは、というのは邪推が過ぎる?^^;)、物書堂版には「第七版から削除した項目例400」が収録されるらしい。fngsw.hatenablog.com

こうなってくると、「翻訳者としてこれから辞書環境をそろえる」なら、もう
物書堂の一択
ということになりそうだ。以下、そう思える条件を挙げてみた。

  • 三大英和大辞典:『研究社 新英和大 第6版』、『ランダムハウス 第2版』、『ジーニアス英和大辞典』の3つがそろった。ひとつのプラットフォームで三大英和大辞典をすべて網羅するのは、今や物書堂が唯一だ
  • リーダーズ英和辞典:準大辞典であり、今でも翻訳者必携。『リーダーズプラス』ももちろんセットになっている。
  • 和英大辞典など:研究社新英和とたいていセットになっている『研究社 新和英大辞典 第5阪』もついにラインアップに登場。国語辞典としても信頼できる、日本英語界で唯一無二の和英辞典だ。また、英語のコロケーション辞典としてやはり唯一無二と言える『新編英和活用大辞典』もある。
  • Oxford系:『Oxford Advanced Learner's Dictionary』(OALD)の第10版がある。そのほか、『Oxford Learne's Thesaurus』は英語の類語辞典として私のイチオシ。おもしろいことにオリジナル英語版のほか、日本語編集版である『小学館 オックスフォード 英語類語辞典』も用意されている。コロケーション辞典も、オリジナルの『Oxford Collocations Dictionary』と、日本語編集版である『小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典』の両方が入っている。このそろえ方は、妙にマニアックな気がする。ただし、類語もコロケーションも、小学館の編集版はオリジナルよりボリュームが小さくなっているので注意。
  • Collins系:Collins系も、どのプラットフォームよりも充実している。まず、大辞典に当たる『コリンズ英語辞典』がある。そして、学習英英の『COBUILD 9th』、米語の学習英英『COBUILD Advanced Amerucan 2nd』、さらにはそれを英英和という形にした『COBUILD Advanced 英英和』まである。これもかなりマニアックだと思う。
  • 学習英和:『ウィズダム英和辞典 第4版(+和英第3版)』、『ジーニアス英和辞典第5版(+和英第3版)』、『オーレックス英和辞典 第2版(+和英辞典第2版)』と、定評のある3種類がそろっている。学習英和は、この3つがあればほぼ十分
  • 国語辞典:大辞典から小辞典まで、万全ではないが、翻訳者として使いたい国語辞典がひととおりそろっている。『大辞林 第4版』は、百科項目まで含めた総合辞典だが、翻訳者にとっては『広辞苑』より役に立つ。新しい語彙なら『大辞泉』もある。小型辞典としては、『明鏡国語辞典 第三版』、『新明解国語辞典 第八版』、『三省堂国語辞典 第八版』(近刊)の3つがあるので、翻訳として必要な範囲の8~9割くらいはまかなえるはず。
  • 国語の類語辞典:十分とは言えないが『角川類語新辞典』と『日本語大シソーラス』があるので、類語辞典に関しても最低限の用は足りる。前者は語義付き、後者は類語リストの閲覧に向いている。これ以外の類語辞典は、どのみち電子媒体はほぼ存在せず書籍版に頼ることになる。

私自身が英和翻訳者だから、英語と国語しか取り上げていないが、このほかにも実は中国語、韓国語、タイ語、ドイツ語、フランス語、スペイン語……など各国語の辞典もある。

物書堂の辞書アプリは、基本時にiOS版のみなので、これまでずっとiPhoneかiPadでしか使えなかった。が、アーキテクチャ変更に伴ってMacでも使えるようになった。これまで、翻訳者の環境としてWindowsのほうが優勢だったが、こと辞典に関しては、Macユーザーのほうがかなり有利になってきた。

Windows環境で何とかして物書堂アプリを使えないものだろうか……と考えてネット検索してみたのだが……。その話は次のエントリで。