# 尻馬記事 -「選んで引きたいオンライン辞書」雑感:国語編

一度は投げ出した国語編ですが、せっかくなのでやっておこうと思い直しました。

ヒマだからなっ! いや、ヒマじゃないってば!

 

西練馬さんも書かれているとおり、国語辞典もオンライン版のラインアップは貧弱です。

オンラインで使える国語辞典というと、いちばん多いのは『デジタル大辞泉』(無料)です。コトバンクにもgoo辞書にも入っています。そのコトバンクは、『精選版 日本国語大辞典』まで入って話題になりました(無料)。『スーパー大辞林』は、昨年の春くらいにいっせいに引き上げられちゃったようですね。

ジャパンナレッジ(有料)には、『日本国語大辞典』のほか、『デジタル大辞泉』、『デジタル大辞泉プラス』があります。

…… と、こう並べてみると、世間一般的には「それだけあれば十分じゃん」というところなのかもしれません。でも、残念ながら、そういう認識自体、国語辞典というものの性質が一般には理解されていないことの証左と言えます。

辞書マニアと言わずとも、いやしくも言葉を扱う仕事をしていれば、これではぜんぜん足りないと納得できるはずです。私たち翻訳者にとってもまったく同様です。特に、小型の国語辞典が足りません

 

そうそう、ひとつだけ注意喚起を。

国語辞典 無料

というキーワードで検索すると、実は、あるサイトがヒットするかもしれません。『広辞苑』を筆頭に、大辞林、大辞泉、明鏡、新明国など錚々たる国語辞典がそろっているはずです。が、これは平然と著作権無視を続ける

悪質な違法サイト

です。よい子の皆さんは、間違っても使ってはいけません。

以下、目次で◆を付けたのは、個別の辞書名ではなく辞書ポータルという印。

[目次]

現代国語例解辞典 第五版
(現国例:DONGRI、有料)

学習英和編の『コンパスローズ』でも紹介した、中高生向けオンラインサービスに、『現代国語例解辞典』の第五版が入っています(980円/年

これが使えて年額980円は格安だと思います。1日あたり2.7円ですよ、社長!

この辞典の良さについては、私も、ながさわさんのブログ記事を参照して済ませます^^;

fngsw.hatenablog.com

類語の使い分けと、表記についての情報は、まさに翻訳者向きです。これを使うためだけにでもDONGRIは利用する価値があります。しかも、DONGRIなら、次の紹介する『明鏡国語辞典 第三版』と『新明解国語辞典 第八版』も入りました。

つまり、オンライン国語でほとんどまったくカバーされていなかった

小型の国語辞典

が一気に充実するということ。インターフェースさえ、もう少し良くなってくれれば……。


明鏡国語辞典 第三版
(明鏡:DONGRI、有料)

翻訳者に『明鏡国語辞典』をお薦めする理由は省略します。2020年に出たばかりの、その第三版が入りました(1100円/年

『明鏡国語辞典 第三版』は現在、書籍版のほかは物書堂アプリしかありません。つまり、今のところDONGRIは、PC上で明鏡が使える唯一の環境ということ。第二版を出していたLogoVistaからは、なぜか三版が出る気配が一向にありません。


新明解国語辞典辞典 第八版
(新明国:DONGRI、有料)

「独特な語釈」だけが売りじゃない! ということを翻訳者にも知ってほしい新明国。これも、最新の第八版(1650円/年)をPC 上で使える唯一の選択肢です。明鏡と同じく、LogoVistaさんがなぜか動いていません。

……とまあ、DONGRIの年間サブスクリプションも、3冊、4冊と重なっていくと、総額はそれなりになってしまうのかもしれませんが。


使い方の分かる 類語例解辞典
(類例解:無料)

学習英和編でプログレッシブを取り上げたときに触れましたが、goo辞書では無料でこれが使えます。この辞典の良さについても、詳しくは言いませんが、ひとつだけ。

実はこの辞書、自立語だけではなく、助詞・助動詞の使い分けも載っています。これは、類書の『新明解類語辞典』や『講談社 類語辞典』にない大きな特徴です。

たとえば、よく話題になる「に」と「へ」なども。

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このように、使い分けの説明と、そしてマトリックスによる用例がわかりやすく出てきます。これ、翻訳者としては必携でしょ。

▲ちなみに、AHDと同様、これも『Bookshelf 2.0』に入っていました。書籍版ももちろん出ています。そのなかで私がいちばんよく使うのは書籍版。なんだかんだ言っても、レイアウトがいちばん見やすいからです。


デジタル大辞泉
(無料)

リンク先はgoo辞書にしてありますが、冒頭で書いたように、コトバンクでも使えます。

かつては書籍版もあった中型国語辞典(広辞苑や大辞林と同じ)ですが、これからは「オンラインで行くぜ!」と割り切って、それ以来どんどん収録語数を増やしています(2021年4月現在、30万4千項目)。ということは、新語や新語義に強いわけですが、翻訳者としては、通用度の基準にするのはやや危険、参考程度と位置付けておくのが無難です。

最新の更新情報は、ジャパンナレッジで見られます。

更新情報 | デジタル大辞泉

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こういう言葉がいちはやく収録されます。IT系のニュース翻訳なら使えそうかな。

有料にはなりますが、ジャパンナレッジにも入っています。


◆ジャパンナレッジ
(有料)

英和でも取り上げました。国語辞典としては、

・日本国語大辞典 第二版
・デジタル大辞泉
・デジタル大辞泉プラス

があります。そのほか、国語系では

・数え方の辞典
・新選漢和辞典 Web版
・全文全訳古語辞典

なども入っているのですが、あまり翻訳者ご用達ではないのかもしれません。

▲ちなみに、『デジタル大辞泉プラス』というのは、かなり特殊なコンテンツです。

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この手の情報が大量に増え続けています^^ どちらかというと、国語辞典ではなく『現代用語の基礎知識』と同じカテゴリですね。

▲そのほか、実はジャパンナレッジには

・岩波国語辞典 第八版
・現代国語例解辞典 第五版

なども潜在的なコンテンツとしては収録されているのですが、これは残念ながらSchool という学校向けライセンスでしか利用できず、私たちは涙をのむしかありません。

 

ふー。また馬屋に行かねば……。