# オンライン英英辞典の広告表示とインターフェース

去年の8月、Oxfordのオンライン辞書が有料化したことをご案内しました。

baldhatter.hatenablog.com

このときも書きましたが、結局、従来のODE(Oxford Dictionary of English。OEDとは違うので念のため)に相当する無料辞書はなくなったようです。

この顛末でもわかるように、オンライン英英辞書の世界も経営はけっして楽ではないのかもしれません。そう思いながら最近のオンライン英英辞書サイトを使っていて、ふと広告表示のことが気になりました。というわけで、今回はオンライン英英辞書(のうち私がよく使うもの)の広告表示がどうなっているかを調べてみました。

……と書きましたが、広告のことだけでなく、インターフェース全体についても気づいたことはまとめています。

ただし、これは私のPCでChromeを使っている場合です。ブラウザーを変えると状況がちょっと違うこともあるようですし、ましてスマートフォンなどのモバイル環境だと広告の見え方はかなり違うはずです。また、私のChromeにはAdblock Plus(広告ブロックの拡張機能)が入っているので、そのオン/オフで違いがある場合はそれについても触れています。

American Heritage

アメリカ英語の一般辞書です。運営元はHarperCollins Publishers。Adblockの有無にかかわらず、広告はいっさい表示なしです。

American Heritageについては、この記事で詳しく取り上げています。

baldhatter.hatenablog.com

インターフェースはそっけないものの、良心的です。もちろん、いつまでこの状況が続くかはわかりません。

Cambridge Dictionary

一般辞書/学習辞書。基本はイギリス語ですが、Essential Americanとしてアメリカ語も見られます。運営元はCambridge University Press

Adblockをオンにしていても*1トップと左サイドに広告が表示されます。ページの最後までスクロールすると、そこにも小さめな本文中広告があります。Z会さんも広告出してるんですね^^;

ところで、上のスクリーンショットでは、ページ全体が日本語表示になっていることにお気づきでしょうか。日本語ロケールで使っていると、ときどきこうなるのですが、日本語表示の機能は二重になっています。ページ全体の表示言語と、辞書の言語です。

まず、ページ全体の表示言語。ページ右上にある

ここで言語を切り替えます。そうするとメニューなどは英語になって、こんな表示になりますが……

辞書の内容はまだ「English-Japanese」のままですね。つまり、この状態は「英和辞典」なのです。といっても、「辞書」という訳語があるだけで、英和辞典と呼べる内容ではありません。本来の英英辞典に切り替えるときは

ここの右端のハンバーガーメニュー(縦三点)で「English」を選びます。

ちなみに、一般辞書と学習辞書の切り替えもこのメニューからできます。たとえば、ここで引いているdictionaryの場合、一般辞書と学習辞書ではこんな風に記述が違います。

a book that contains a list of words in alphabetical order and explains their meanings, or gives a word for them in another language; an electronic product giving similar information on a computer, smartphone, etc.:

これが一般英英。

a book that contains a list of words in alphabetical order with their meanings explained or written in another language:

こちらが学習英英です。

なお、[Log in/Sign Up]からユーザー登録(無料)する機能はありますが、それで広告が非表示になるということはありませんでした。そりゃそうか。

Collins

一般辞書/学習辞書。イギリス語もアメリカ語も選べます。運営元はHarperCollins Publishers

やはり、Adblockをオンにしていても*2トップと左サイドなどに一定数の広告が出ます。

しかも、ページ全体では広告数がCambridgeよりだいぶ多い印象ですが、それは全体の情報量が多いせいかもしれません。

Cambridgeと同じく、一般英英/学習英英などを切り替えられます。上のスクリーンショットで「English Dictionary」と表示されている赤いボタンを押すと、

メニューが出ます。ただし、わざわざここから選ばなくてもページを下にスクロールしていくだけで済みます。一般/学習、イギリス語/アメリカ語など、このメニューに並んでいる内容がすべて1ページに収めてあるからです。ここがCambridgeとは大きく違う違うところですが、画面を切り替えるかスクロールしていくか、好みは人それぞれでしょうね。

ページの最初はCOBUILD、つまり学習英英です。このサイトを見るとき読みたいのは、まずCOBUILDなので、この作りはとても助かります。続いて、画像とか発音のセクションがあって、そのあとにイギリス語アメリカ語と続きます。一覧性の高い、とてもよくできたインターフェースだと思います。

一般英語(イギリス語)とCOBUILDの語釈を並べておきます。

A dictionary is a book in which the words and phrases of a language are listed alphabetically, together with their meanings or their translations in another language.

これがCOBUILD。

1a. a reference resource, in printed or electronic form, that consists of an alphabetical list of words with their meanings and parts of speech, and often a guide to accepted pronunciation and syllabification, irregular inflections of words, derived words of different parts of speech, and etymologies
b. a similar reference work giving equivalent words in two or more languages. Such dictionaries often consist of two or more parts, in each of which the alphabetical list is given in a different language
a German-English dictionary

こちらが一般語。一言語辞書と二言語辞書を分けて説明していますね。おもしろい。

ところで、Cambridgeのサイト全体が日本語表示されていた例をあげましたが、Collinsのサイトも多国語の対応したようです(たぶん最近になって)。

やはり日本語ロケールだからか、先日たまたまこのようなページが表示されて気づきました。今回の記事を書くことにした直接のきっかけが、実はこれでした。

しかもこれ、機械翻訳?という疑いがあります。少なくとも、日本語の検証が十分とはいえません。その証拠が、このスクリーンショットで見えている「翻訳者」というメニュー。英語表示のときは「TRANSLATOR」でした。押してみるとわかりますが、ここから開くのは機械翻訳の機能です。翻訳者を呼ぶわけではありませんw

言語切り替えは、ページの末尾にあります。

ここで見えている「私の個人情報を販売しないでください」ってのも、日本語ローカライズの甘さを示す一例。英語では "Do Not Sell My Personal Information" です*3

Collinsのサイトもユーザー登録できますが、広告の表示に変化はありません。

Longman

イギリス英語の学習辞書。運営元はHarperCollins Publishers

アクセスすると、まずこのダイアログが表示されます。

このままダイアログを閉じるだけで使えますが、やはりAdblockの有無にかかわらずトップと左サイドなどに広告が出ます。

こちらのサイトも、ページ右上に言語切り替え機能があって日本語表示にできますが、あまり変化はありません。

それよりも注目したいのが、辞書の切り替えです。

ここで「English-Japanese」を選ぶと、『ロングマン英和辞典』に相当する内容が引けます。

Macmillan Dictionary

イギリス語の学習英英。運営元はMacmillan Education

Adblockをオンにすると広告は出ません(今のところ)。オフにすると、トップと左サイド、それからスクロールしていくと右サイドや最後に広告が出ます。

Merriam-Webster

アメリカ語の一般辞書。運営元はEncyclopædia Britannica, Inc.

Adblockをオンにすると広告は出ません(今のところ)。オフにすると、本文中、右サイド、それから画面下に固定されるタイプ(上のスクリーンショットだとHyundai)が出てきます。今回確認したなかでも、かなりうるさい部類です。

右端に[Log in]というボタンがあって、ここからRegisterすると広告が減りました。[Log in]の左に[Join MWU]というボタンがありますが、こちらはMerriam-Webster Uabridged、つまり大辞典の有料サブスクなので、このサイトの登録とは違います(私はUabridgedの有料サブスクを使っていますが、アカウントは別のようでした)。

Merriam-Webster Learner's Dictionary

アメリカ英語の学習辞書。運営元はEncyclopædia Britannica, Inc.

広告の出方は一般辞書サイトと同じですが、本文のボリュームが小さい分、いちばんうるさい印象です。

Oxford Dictionaries

イギリス英語の一般辞書。運営元はOxford University Press

冒頭で書いたように、すでに有料になっているので、当たり前ですが広告は出ません。気持ちいい。

私は使いませんが、英語以外の辞書も同じ料金の範囲で利用できます。

ページの最後まで行くと、左下に言語切り替えのボタンがありますが、

残念ながら日本語は入っていません。相手にされていないようです……

Oxford Learner's Dictionaries

学習英英。基本はイギリス語ですが、アメリカ語も選択できます。運営元はOxford University Press

Adblockをオンにしていても、トップと左サイドに広告が表示されます。

このサイトも[Sign in]の機能はありますが(無料)、ログインしても広告表示は変わりません。

Dictionary.comThe Free DictionaryOne Look Dictionary

最後に、複数の辞書をまとめて引ける辞書ポータルのうち、代表的な3つも取り上げておきます。

Dictionary.comは、Adblockの有無にかかわらずトップや右サイドに表示されるほか、画面下固定タイプも出てきます。

The Free Dictionaryは、Adblockをオンにすると何も表示されず、オフにするとトップやページ末尾などに広告が出てきます。

One Look Dictionaryは、おもしろいことに広告表示がいっさいありません。てか、改めてよく見ると、このサイトって運営元がわかりませんね……。個人?

 

ということで、オンライン英英辞典の広告表示と、インターフェース上の特徴をまとめてみました。無料サイトが広告収入に依存しているのは、もちろん当然なので、広告は我慢してありがたく使わせていただくしかないでしょう。ただ、今のような広告ビジネスにもいろいろと限界があると言われ始めていることもあり、これからは、こうしたサイトのあり方も変わっていく可能性があります。Oxfordの動向などは、その先駆けなのでしょう。個人的には、
「辞書はタダ」という風潮は好ましくない
と思っているので、むしろ歓迎すべき変化かも知れない、とも考えています。

*1:ただし、オフにすると左サイドの広告がこれより大きく表示されました。どんなしくみか不明です

*2:オフにすると広告のサイズが大きくなる点は同じでした

*3:ちなみに、この例のように、一見すると命令文のように見える文字列を、そのまま「~してください」と訳してしまうのも、UI(ユーザーインターフェース)翻訳ではあるあるですよね。日本語ローカライズが甘い製品/サービスなら、いたるところで見かけます。文脈が不明なままUI を訳させるという悪習が、今に至るまでまったく変わっていないんですから、こうなっちゃうのは当然。もっとマシなやり方がいつかは出てくるだろうと思っていましたが、そうならないまま、「この程度の日本語でいいでしょ」になってしまった気がします。