続いて、一般英英辞書です。
なお、西練馬さんがこのセクションで最後にあげているOxford English Dicionary(OED)については、私もここでは扱いません。旧ブログに記事を書きましたので、そちらをどうぞ。
禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # OEDのオンライン版~まさに格の違い~
目次
- Oxford Lexico
- Merriam Webster(MW)
- Merriam Webster Unabridged(MWU)(有料)
- American Heritage Dictionary of the English Language(AHD)
- Collins Online Dictionary
今回も、特に断り書きがない限り、引用部分の出典は西練馬さんのnote記事です。
Oxford Lexico
英オックスフォード大学出版局(OUP)とDictionary.comが共同運営
しているというのは知りませんでした!
内容は、電子辞書端末に収録されていることも多いOxford Dicionary of English(ODE)に当たり、もともとのOxford English Dicionary(OED)とは別系統の現代的な手法で編纂を続けている辞典です。
いわゆる『オックスフォード英語大辞典』はOEDのほうですが、現在では ODE のほうが "一般的" な「オックスフォードの大辞典」なのかもしれません。
「+More example sentences」ボタンで実に大量の例文が展開するものの、ハイライトなどがなく見づらいのが難
これはそのとおりなので、私は必要なときは例文をMS Wordに貼ってハイライトしています。
メニューからは、UK、US のほか、スペイン語も選べます。世界の言語事情をよく反映している気がします。
Merriam Webster
(MW)
言うまでもなく、アメリカ英語を代表する辞典の本家本元。
今はオンライン版で更新が続いていますが、元本になったのは、Merriam-Webster's Collegiate Dictionary。日本の国語辞典で「中辞典」くらいの語感のようです。これを中辞典と位置付けると、その "親" に当たる大辞典が次のUnabridgedです。
西練馬さんが書かれているように、けっして読みやすい辞書ではありませんが、新語が収録される早さを考えると、翻訳者としてはやはりおさえておくべきオンライン辞書のひとつといえます。
この例のように、比較的新しい意味の使い方を、引用元のはっきりしている実例で確認できる辞書は、なかなか貴重だからです。
この手の情報をもっと詳しく知りたいときには、次のあげる有料の親辞書の出番です。
Merriam Webster Unabridged
(MWU)(有料)
西練馬さんが「使用経験なし」と書かれているので、こちらで少し補足します。
有料サイトです(年間49.95ドル)。OEDをイギリス英語の頂点とすると、アメリカ英語の頂点に当たるのがこのMerriam Webster Unabridgedです。書籍時代のタイトルは、何度かの変遷がありましたが、最も有名だったのがこれ。
この第3版が最新なのですが、最新といっても発行は1961年。私と同い年なので、今年で還暦です^^;
編纂は続いているという噂もありながら長らく改訂がありませんでしたが、結局は書籍版の改訂を断念して、オンライン版で更新が続くことになりました。以前は、OED と同じく年間300ドル近くしたのですが、最近一気に値下がり。
付記しておくと、有料オンラインサイトのサブスクリプション料金は、いわば
今後も改訂を続けてもらうための「協力費」
だと思っているので、私は積極的に有料の辞書サイトを利用しています。
もちろん、OEDと同じく歴史主義の排列なので、ふだん使いの辞書ではありません。更新頻度もOEDほど高くないようです。それでも、アメリカ英語について、OEDと同じように「可能な限り古い出典を探し出して載せる」という方針をとり、しかも新語の採録も続けているので、翻訳者としての利用価値はけっして低くありません。
一例として、trollという単語。日本語でも、ネット俗語に「あらし」という名詞、あるいは「あらす」という動詞があります。あれに当たります。OEDでは2006年時点のDraftとして自動詞が載っているだけです。
一方、Merriam Webster Unabridged には2009年からの他動詞が載っています。
▲"Webster"という名称をめぐる紆余曲折もなかなかおもしろいので、興味のある方はJTFジャーナルの
2016年5/6月号(通算283号)
をぜひ。
American Heritage Dictionary of the English Language
(AHD)
Merriam-Websterを別格とすると、Randomhouseと並ぶアメリカ英語の双璧……だと私は思っているのですが、
数年前までは新語の追加などもしていたようですが、最近は更新された形跡がない。サイトデザインもここ10年ほど変化していないはず。
確かにそれは否定できないかも。
とはいえ、翻訳者としては、やはりアメリカ英語を知る辞典として手放せません。たとえば、
この最後の語義、「ガソリンスタンド」のことですが、これをはっきり載せている辞書はわりと少数です(ガソリンスタンドの「給油機」までは、わりとよく載っている)。
あるいは、
名詞 hack のこの語義。これも、はっきり立項されている辞書は少なかったはず。
ということで、AHDの擁護をしてみました^^; この記事を書こうと思った直接の動機は、実はこれでした。
▲AHDは、これまでもあまり電子化されてこなかった辞書のひとつだと思います。私の手元には、第3版(1992年)の電子版があるのですが、これは、かつてMicrosoftから出ていたリファレンスコンテンツ『Bookshelf 2.0』に収録されているものです。このBookshelfというシリーズについては、旧ブログで詳しく書いたことがあります。
Bookshelf 2.0は、著作権表示が 1987-1998という古い製品なのですが、ありがたいことにWindows 10にもインストールできました。
Collins Online Dictionary
これについては、「学習英英編」に書いたとおりです。「学習英英編」では、COBUILDとして紹介していますが、一般英英も同じサイトで使えるという便利な作りです。
英コリンズ社の辞書ポータルサイトで、前述の学習英英〈COBUILD〉のほか、一般英英〈CED〉(Collins English Dictionary。上図)、一般英英〈Webster’s New World College Dictionary〉(上記の〈M-W〉とは別物)、シソーラス等がまとめて引けます。
一般英英のイギリス語がCollins English Dicionary(CED)なのは知ってましたが、アメリカ語はWebster’s New Worldだったんですね。これは知りませんでした。
▲なんで、別の出版社なのに Webster’s という名前を付けているのか。この辺の事情も、2016年5/6月号(通算283号)で書いています。
ふー。一般英英は以上です。