# 翻訳者必携辞書を実際にそろえてみる

告知していたとおり、昨日9/18の「HUMAN POWERED翻訳勉強会」で辞書の話をしまた。参加者数は、同勉強会始まって以来の最多だったこのことで、ご視聴くださった皆さんには心よりお礼を申し上げます。

私は、予定どおり「ゼロから始める辞書生活」ということで、主に「これから辞書環境をそろえる」という視点から話をしました。おまけとして、Weblio収録の "辞書" の素性をさらってみた「Weblio収録一覧」と、翻訳として最小限必要な辞書をまとめた「翻訳者必携辞書リスト」もお渡ししています。

私がふだんお伝えしている内容からすると、ほんの一部の話で、
・個々の辞書の特徴
・辞書の読み方
・具体的な辞書ソフトの使い方
などについては触れていません。もっと詳しく知りたい方は、このブログと旧ブログ(右カラムのリンクから)で「辞典・事典」カテゴリーの記事をご覧ください。

また、フェロー・アカデミーでも、「翻訳者のための辞書セミナー」と題して録画配信形式の講座をお届けしています。

  1. 選び方と読み方を見直してワンランク上の翻訳を!
  2. なぜ英英辞典を引くのか?
  3. 辞書引きから訳文作りの実践へ

以上の全3回が1セットになった内容で、もちろん単独でもご視聴いただけますが、しっかり辞書のことを知りたい方は、シリーズを通して受講するとよさそうです。

www.fellow-academy.com

いま見たら、ちょうどパート1の受付が10/15に始まります。昨日の私の話で辞書のことを詳しく知りたくなった方は、ぜひどうぞ~。

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さて、昨日お渡しした「翻訳者必携辞書リスト」の辞書、実際にどうそろえるのがよさそうか、ちょっと補足してみたいと思います。

リストにある辞書は以下のとおりです。繰り返しますが、これで十分ということではありません。このくらいがミニマムというラインアップです(OED、Merriam Webster Unabridgedなど有料英英は、ひとまず除きました)。

辞書名のあとに、おすすめの媒体を添えてみます。なお、岩波国語、新明解、明鏡については2つの版を載せていますが、新しいほうだけで大丈夫です。

  • 研究社 新英和大 第6版[KOD]
  • 研究社 新和英大 第5版[KOD]
  • 研究社 リーダーズ英和 第3版[KOD]
  • 研究社 リーダーズ・プラス[KOD]
  • 大修館 ジーニアス英和大[EPWING]
  • 小学館 ランダムハウス英和大 第2版[JK][物書堂] 
  • 研究社 新編 英和活用大[KOD Adv][LV] [物書堂] 
  • ビジネス技術実用英語大 V6(うんのさん)[EPWING]
  • 研究社 ルミナス英和 第2版[無料OL] 
  • 研究社 コンパスローズ英和[KOD]
  • 大修館 ジーニアス英和第5版・和英第3版[LV][物書堂] 
  • 三省堂 ウィズダム英和第4版[書籍+専用OL]
  • American Heritage Dictionary[無料OL] 
  • Cambridge Dictionary[無料OL] 
  • Cambridge Learner's Dictionary[無料OL] 
  • Collins English Dictionary[無料OL] 
  • Collins COBUILD[無料OL] 
  • Longman Dictionary of Contemporary English[無料OL] 
  • Merriam Webster[無料OL] 
  • Merriam Webster Learner's Dictionary[無料OL] 
  • Oxford Dictionary (Lexico)[無料OL] 
  • Oxford Advanced Learner's Dictionary[無料OL] 
  • 小学館 精選版 日本国語大辞典[コトバンク] 
  • 三省堂 大辞林 第四版[LV][物書堂]
  • 岩波 岩波国語辞典 第八版[LV]
  • 三省堂 三省堂国語辞典 第七版[物書堂]
  • 三省堂 新明解国語辞典(第七版)[LV]
  • 三省堂 新明解国語辞典(八版)[DGR][物書堂]
  • 大修館 明鏡国語辞典 第二版[LV]
  • 大修館 明鏡国語辞典 第三版[DGR][物書堂]
  • 小学館 現代国語 例解辞典 第五版[DGR]
  • 三省堂 例解 新国語辞典 第十版[書籍]
  • 三省堂 てにをは辞典[書籍]
  • 角川 基礎日本語辞典[書籍]
  • 三省堂 明解類語辞典[書籍]
  • 小学館 使い方の分かる類語例解辞典[goo辞書]

略号は以下のとおりです。料金も併記します。

  • KOD……研究社オンラインディクショナリー(6,050円/年)
  • KOD Adv……同アドバンスト(12,100 円 /年)
  • JK……ジャパンナレッジ(16,500円~22,000円/年
  • LV……LogoVista(約3,000~13,000円/タイトル)
  • DGI……DONGRI(約1,000~2,000円/タイトル/年)
  • OL……オンライン

リストに入れた推奨辞書をすべて使うために必要なプラットフォームは、

  1. EBWin4 または Dicregate
  2. Webブラウザー(何でもOK)
  3. Macまたは iOSデバイス
  4. LogoVistaブラウザー
  5. 書籍

ということになります。大ざっぱにいうと、以下のような環境を作ることになります。

●EWin4 または Dicregate
『ジーニアス英和大』と『ビジネス技術実用英語大 V6(うんのさん)』を登録して使えます。また、絶滅危惧種の共通仕様EPWINGではありますが、リストに掲載した以外にも、以下のEPWING辞書を無料でダウンロードできます。

WordNet 3.1(https://wordnetepwing.osdn.jp/
※このページにある wordnet-en-140419.zip をダウンロード

Wiktionary(https://lailaps.osdn.jp/

青空文庫の全文EPWING(https://aozorawing.osdn.jp/

Webブラウザー
リストにある英英辞典サイトなど、使える辞書サイトは片っ端からブックマークしましょう。また、前項の EBWin4 と Dicregate には、Web上の辞書サイトを登録する機能もあります。これをうまく使えば、ブラウザーが要らなくなるので、使い分けるプラットフォームがひとつ減ります。

Macまたは iOSデバイス
物書堂のアプリはMac OSまたは iOSデバイスでしか動きません。Macユーザーの方はラッキー。Windows環境の方は、仕事机にiPadも並べて使いましょう。

LogoVistaブラウザー

リストの載せた辞書のうち、どうしてもLogoVistaで買わなければならないのは、『大修館 ジーニアス英和第5版・和英第3版』と『岩波国語辞典 第八版』くらいです。他の国語辞典をそろえたら、岩波国語の優先度は少し下げてもいいかもしれません。
【コメントいただいたように、ジーニアス英和は物書堂にもありました】

書籍
国語系の辞典には、まだまだ書籍しかないものもたくさんあります。この際ですから、本棚の1段くらいを空けて紙の辞書専用のスペースにしてみてはどうでしょうか。

以上で、翻訳者に必要な辞書はだいたいそろうことになりますが、最後に少しだけ補足しておきます。

いわゆる三大英和(研究社新英和大、ランダムハウス英和大、ジーニアス英和大)とリーダーズはすべてそろいました。ただし、新英和大、RHD2、リーダーズはオンライン、G大はEPWINGなのでどうしても一括では引けません。

EWin4またはDicregateにジーニアスと「うんのさん」、いくつかの無料EPWING辞書を登録し、そこにオンライン辞書も登録すれば、これがいちばんよく使うプラットフォームになりそうです。

学習英和は、何をおいてもウィズダム推奨です。それがあれば、ジーニアス英和はひとまず後回しでもOK。また、コンパスローズはルミナスの後継辞書なので、KODをお使いならルミナスはなくても大丈夫です。

国語辞典ですが、リストにある大辞典は後回しでOKです。中辞典では広辞苑より大辞林のほうが翻訳者には向いています。とにかくまず、国語は小辞典が優先。なかでも、明鏡国語辞典新明解国語辞典三省堂国語辞典はそろえたい。

類語辞典はほとんどが書籍です。あきらめましょうw