# 新しい訳書、『ハッキング思考』

新しい訳書が出ました(日付を勘違いしてたので、過去形)。

原著者は、なんと、あのブルース・シュナイアー大先生です。

hackとかhackingという言葉はもともと悪い意味ではなかったという話をご存じの方も多いと思います。本書には、悪いハッキングも良いハッキングも出てきますが、単純にそういう二分の話ではありません。

なぜ人はハッキングしたがるのか、どんな人がどんな理由でハッキングしようとするのか、どんな盲点を突くとハッキングは可能なのかといったことが、おもしろいエピソードとともに語られます(ハッキングの具体的な手順が書いてあって自分もそれを真似られるわけじゃありません^^)。そういうたくさんのエピソードから、タイトルどおり「ハッキングするときの考え方」を説明している本であり、副題にある

強者はいかにしてルールを歪めるのか
それを正すにはどうしたらいいのか

を知るというのが本書の最終的なポイントです。

ハッキングが横行した結果、その手法が違法になった場合も、世の中に定着した場合もあるという話を読むと、人間が作る社会――政治経済、娯楽、スポーツまで――の複雑さと不思議さも改めて実感します。

原著者のことを「大先生」と書きました。ご存じの方はご存じのように、ブルース・シュナイアーはセキュリティの大家であり、これまでにもたくさんの著作があります。

こちらの大著には、『現代暗号技術入門』を訳すとき、たいへんお世話になりました。

山形浩生さんが訳されたこちらの本も有名です。

『ハッキング思考』と同じ日経BPさんからは、かつてこちらの訳書も出ていました。こちらの訳者は井口耕二さんです。

昨年から今年にかけて、ひょんなタイミングに恵まれて、なんと4冊も訳書が出てしまいました。これまでの3冊は、どれも技術的な面倒くさい話が山ほどありましたが、今回の『ハッキング思考』は今まででいちばん「一般向け」の内容です。気楽に楽しく読める本だと思います。訳しているときも、今まででいちばん楽しかった一冊です。