# コンマの話

フィーダーに登録してある翻訳系のブログで、コンマについて興味深い記事を拝見しました。

ameblo.jp

ameblo.jp

表記としては「コンマ」より「カンマ」のほうが好みなのですが、それはさておき、たしかに「コンマ1秒」は不思議です。その理由はリンク先のブログをご覧いただくとしては、私は私で、ちょっと辞書に当たってみました。

ちなみに、「カンマ」表記のほうは立項なし、または空見出しが多いので(手持ちのすべては調べていません。電子的に手軽に引けるものたけ)、これ以降も「コンマ」ということで話を進めます。

いくつかの辞書は、この使い方だけでなく由来についても言及していました。まず『明鏡国語辞典(第三版)』。

コンマ
小数点を表す記号。「5.1」などと使う場合の「・」。
「コンマ以下(=小数点以下。転じて、標準以下であること)」
◇江戸末期、蘭学者がオランダの習慣に倣って小数点に①を使ったことから。

『新明解国語辞典(第八版)』にもあります。

コンマ
小数点の異称。ポイント。
明治期に、小数点として「コンマ」を用いるフランスの方式が入ったことによる
二コンマ五〔=2.5〕・ コンマ以下〔=水準以下(の人)〕

ただし、「新明解」はオランダ経由ではなくフランス経由と書いています。この辺はもっと詳しく調べないとわかりません。

『三省堂国語辞典 第七版』『大辞林 第四版』『岩波国語辞典 第八版』『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』は、この使い方の語義のみで、由来に冠する記述は特になし。以下は、そのひとつ『大辞林 第四版』です。

コンマ
②小数点。

コンマ以下
〔小数点以下の意〕
①数や量が微小であること。
②普通より劣っているもの。標準以下のもの。「―の成績」

最後に『広辞苑 第七版』の記述から。

コンマ【komma オランダ】
②(オランダ語では ①を用いることから)小数点。「―以下は切捨て」

コンマ‐いか【コンマ以下】
小数点以下の意から転じて、普通以下のもの。物の数に入らないもの。

ここで注目したいのは、原語として併記されているのがオランダ語 komma だということです。

これは辞書によって差があって、オランダ語を併記しているのは『広辞苑』のほかは『三省堂国語辞典 第七版』だけでした。しかも、おもしろいことに、「オランダの習慣」と書いていた「明鏡」でも、「フランスの方式」としていた「新明解」でも、併記しているのは英語の comma です。由来と原語は必ずしも同じではないということなのでしょう。

ところで、冒頭でリンクした1つ目のブログ記事にあるように、今でも横書きの文書、特に理系になると、日本語の句読点(。、)ではなくピリオドとコンマ(.,)を使うの普通ですね。それはいいんですけど、その混在(。と,)がある理由は、ちょっとよくわかりません。

昨年出た訳書『機械翻訳』も、出版元は理系書が多い森北出版というところですが、こちらは普通に日本語の句読点になっています。