本日7月19日、新しい訳書が出ました。
6月に創刊した「ハヤカワ新書」の一冊です。
(上のリンクが書籍版、下のリンクがKindle版ですが、Kindle版のほうはタイトル中の英文字が全角ですね。気持ち悪~)
2月に『イーサリアム』が出て、3月に『パソコンスキル大全』が出たので、なんと今年に入って3冊目という、自分でもちょっと驚きのペースです。
出てからしばらくAmazonの順位をウォッチしてましたが、瞬間風速で総合24位、新書で3位になってました。さすが、新書となると反応がけっこう違うものですね。
ChatGPTをはじめとする生成AI*1に関する本は、この春先から、それこそ雨後の筍の勢いで出版されています。が、その大半は「いかに使うか」「乗り遅れるな」といった内容のようで、生成AI、特にその基盤となっている大規模言語モデル(LLM)の原理に関する詳しい説明はなかなかないようです。
本書は、そのあたりをかなり分かりやすく説明してくれているので、私自身も、訳していていろいろと感心しました。
生成AI って、ある意味「実はたいしたことはしていない」のですが、「それなのにこんなスゴいことができる」しくみだというのが、本書を読むとよく分かります。つまり、「恐れるに足りない」存在ともいえる反面、「実に恐るべき」存在といえる面もある。
私たち翻訳者にとっても「恐るべき」存在になりうると思うのですが、もう翻訳がどうこうというレベルではないかもしれない。ただ、恐れるとしても恐れるべき理由が分かっているのと分かっていないのとでは雲泥の差があるはずです。
そして、本書にはかなり衝撃的なことも書いてあります。本書が初めてということではありませんが、人間の思考とか言語(運用)というものが、もしかしたらゴニョゴニョ(← いちおうネタバレを回避してます^^)なのではないかという指摘です。
なお、ハヤカワの編集者インタビューとして、こんな紹介記事も出ています。
詳しくは書けませんが、翻訳もけっこう特急作業でした……^^;
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ところで、上の新書ランキングには、5位に『言語の本質』も入っています。
しばらく前からだいぶ話題になっていて(ので、ランクインの安定度は私の訳書の秀はありません)、私も先日読みました。とても刺激的な内容です。そして、直接的にはではないかもしれませんが、生成AI について考えるヒントになる部分もあります。その意味でも、おすすめです。
*1:Generative AI の訳。少し前まで「ジェネレーティブAI」と「生成系AI」が競い合ってましたが、最近はこれでだいぶ定着しているようです