# 述語から読む・訳す ― 陳腐なパターン訳に陥らないために

翻訳フォーラムが、7月24日(土)に『述語から読む・訳す』というテーマのワークショップ勉強会を開催することは、すでにお伝えしたとおりです。

passmarket.yahoo.co.jp

ただ、前回お伝えしたときは、これにどんな効果があるのかという具体的な話までしていなかったので、もう少し補足しておこうと思います。

  • どうしても英文の構造に引きずられてしまう
  • 少し翻訳を経験したが、訳がワンパターンになりがち
  • いつもメリハリのない訳文になってしまう
  • 敬体で訳すときの文末に悩む

こんな心当たりがある人は、『述語から読む・訳す』で大きなブレークスルーが得られるはずです。

 

上に書いたような症状をさらに分析してみると、

  • 原文を文単位でしかとらえていない
  • 原文の〈主語 + 動詞〉構造をそのまま置き換えようとしている
  • 原文の〈形容詞 + 名詞〉構造から自由になれない
  • ……

といった原因が考えられます。

そういうときって、ひょっとすると、ひとまず「○○は~」と主語を立てて、そこから文を組み立てようとしていませんか?

そんな訳し方で生まれた訳文をひとつ取り上げます。あるブログでもネタになっていました。

www.trados.com

GroupShareには、プロジェクトに関わる全員のリアルタイム共有を実現する、翻訳とレビュー用の使いやすいオンライエディタが備わっています。これにより、プロジェクトマネージャーや翻訳者、専門知識を持つエキスパートは、インターネットに接続されたあらゆるデバイスからコンテンツをレビューして簡単な編集を加えることができます

(※下線、太字は引用者)

原文はこちら。www.trados.com

GroupShare includes an easy to use online translation and review editor that enables real-time sharing for everyone working on the project. Project managers, translators and subject-matter experts can now review and make light edits from any device connected to the internet.

1文目は、まず GroupShare includes ... という S+V から解釈した(ついでに、that 以下を editor の修飾語にした)。2文目では Project managers, translators and subject-matter experts という長い主語から考えた……。

こんな思考過程で、上のような訳文ができあがったのでしょう。たった2文ではありますが、文末はしっかり「~ます」が連続しています。下線部の修飾語も長くて読みにくいし、「これにより」も、ありがちな気持ち悪い表現。

 

そこで頭を切り替えて発想したいのが、「述語から読む・訳す」です。

GroupShare が〈どうだ、どんな特徴がある〉と言っているのか?

... can now ってことは、前と違って今〈どうなった〉のか?

日本語にしたとき、この〈どうだ〉〈どうなった〉に当たるのが、そう、述語ですよね。まず、こういう述語を固めてしまう。実はそれが、日本語の構文を決めることにもなります。

こうすれば、原文から離れた日本語らしい構文を作りやすくなります。構文の骨が決まれば、そこに長い修飾語をどう付け足すかという方針も見えてくる。構文を決める段階で文末にも配慮できる。

 

もちろん、こういう発想の転換は、にわかにできるものではありません。そのための基礎訓練をしようというのが、7月24日のワークショップというわけです。

 

興味をお持ちになった方、お待ちしています!