# 尻馬記事 -「選んで引きたいオンライン辞書」雑感:英和編

いよいよ最後、英和編です。もう残りHPもMPも少なくなってきたので、国語辞典まではとても手が回りません。

あ、よく見たら、西練馬さんご本人も、このあたりで「力尽きてきました」って書いてるw

以下、目次で◆を付けたのは、個別の辞書名ではなく辞書ポータルという印。

目次

英語と日本語を結びつけてくれる英和/和英辞書ですが、英英辞書と異なりオンラインで使えるものは多くありません。

まずは、これを肝に命じておきましょう。

無料のオンラインだけではまかなえない

ものと諦めてください。

コンパスローズ
(DONGRI、有料)

DONGRIというサイトが、年間サブスクリプション形式で展開しています(1160円/年)。

インターフェースがけっこう使いにくいというのは、西練馬さんのご指摘どおりです。もう少しがんばってほしい。

ついでに中身について簡単に触れておきますが、実は私自身、最近あまり使用順位が下がっています。基本的には「ルミナス」を、ということはつまり「ライトハウス」以来の研究社らしい学習英和の伝統を継承しているはずなのですが、なんというか、

継承しているだけでその先がまだ少ない

という感じ。「ウィズダム」や「ジーニアス」と比べると、はっきりした特徴が感じられないというか。鳴り物入りだった「語のイメージのイラスト表示」も、私としては 

これの前にはかすんでしまう印象です。

それでも、たとえば副詞のawayを引くとこういう囲み記事があったりするのは、やはり侮れません。

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▲ついさっき知ったのですが(メールは来てたのに、メンテナンスメールだったので捨ててた^^)、もうすぐコンパスローズがKODに入るそうです。入れ替わりに、ルミナスは退場とか。そのとき、次に紹介している無料版ルミナスがどうなるのかは不明。
【6/26、15:40追記】


ルミナス英和 第2版

上の項でも触れたように、「コンパスローズ」の前身です。有料サイトKOD(後述)にも収録されていますが、これだけ単独で無料公開されています。ありがたいことです。「コンパスローズ」に手を出す前に、研究社系の学習英和ということなら、まずこちらをおさえておくといいかも。

検索オプションは「前方」「後方」しかありませんが、成句は検索できます。

URLからの検索はできません

というのは、 たとえば私がよく紹介しているように、辞書ソフト「EBWin4」にURLを登録してそこから引くといった使い方ができない、という意味だと思われます(実際そうなので)。


ウィズダム
(準有料)

書籍辞書(3850円)を購入したうえで登録する必要があります(三省堂デュアル・ディクショナリー)。

私自身、「ウィズダム」の素晴らしさと、それに連動したこのオンライン辞書サービスについては、あちこちで宣伝しているので、詳しいことは書きません。

使い方でひとつ注意したいのは、成句と用例の検索では

単語をスラッシュで区切る

必要があるということです。これについては、旧ブログで記事にしています。併せてどうぞ。

baldhatter.txt-nifty.com

なお、「コンパスローズ」で紹介したサブスクリプションサービスDONGRIにも「ウィズダム」は収録されています(年間1160円)。

▲三省堂デュアル・ディクショナリーでひとつ残念なのは、ログインセッションが意外と早く切れてしまうこと。翻訳しながら使うときには、しばらく放置していることも普通なので、せめて半日くらいは続いてほしいのですが。

▲三省堂さんは、自前のオンライン辞書サービスをやめてしまいましたが、このデュアル・ディクショナリーのように書籍版と連動したサービスは、もっと普及してほしいと個人的には思っています(が、あまり増えていないので、これも先細りなのかも……)。


プログレッシブ

ひとまず、goo辞書へのリンクを貼りましたが、こちらは「英和第5版、和英第4版」 です(無料)。

語釈は、意味の説明となる「解説的語義」と、日本語の文に入れた際にどういう形を取るかの「訳語」とを明確に分ける、という独自の構成。

このアプローチ、好みはあるかもしれませんが、いい試みだと思います。特に辞書というのは「訳語が載っている」と思っている人、

訳語を求めて辞書を引く

癖が付いている人は、しばらく「プログレッシブ」を習慣的に引くようにするといいかもしれません。

上に書いたとおり、goo辞書に収録されているのは「英和第5版、和英第4版」です(現時点で最新版、2012年)。有料サイト、ジャパンナレッジも同じ「英和第5版、和英第4版」を採用しています。一方、無料辞書ポータル「コトバンク」には、「英和第4版、和英第3版」(2003年)が収録されています。

実は、和英のほうはよくわからないのですが、英和に関しては、第4版と第5版でけっこう作りが違っています。たとえば、representという単語を引くと、

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という「基本義」が第4版にはありましたが、第5版ではなくなっています。かと思うと、西練馬さんもあげているswimという単語では、

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という、冒頭でのカテゴリー整理情報が第5版で増えています。

どちらが良い悪いということではなく(第4版のほうが良かった、という声が多いのですが)、せっかくオンラインで2つの版どちらも使えるのですから、いい機会ですから

版の違う辞書を見比べる

教材にしてみるといいのではないでしょうか。

▲なお、goo辞書には国語の類語辞典としてイチオシの『使い方の分かる 類語例解辞典』も載っています。『プログレッシブ英和第4版』と『使い方の分かる 類語例解辞典』、この2つの辞書のためだけにでも、goo辞書はブックマークしておく価値があります。

▲ただしgoo辞書は、かつて収録していた『ランダムハウス英和大辞典』のサービスを、ある日突然終了したという"前科"があるので(事前の予告はなかったと思います)、無料サービスとはそういうものだということをお忘れなく。


ロングマン

Longmanの英英サイトでこの英和も引けることは、「学習英英編」で書きましたので、そちらをどうぞ。

個人的に、嫌いな辞書ではありません^^


◆ジャパンナレッジ
(有料)

多くは語りません。日本最大の辞書ポータルサイトであり、翻訳者にとっての利用価値も絶大です。

何といっても、『ランダムハウス英和大辞典』(RHD2)をオンラインで使えるのは、ここだけになっています。電子辞書端末やアプリでは今でも使えますが、PCで使えるRHD2製品は絶滅してしまいました。

ただし、それ以外の英和ラインアップは、けっして十分とは言えません。

・プログレッシブ英和第5版・和英第4版
・ビジネス技術実用英語大辞典V6(うんのさん)

だけです。しかも、「うんのさん」を使えるコースはパーソナル+R。私はあちこちでおすすめしているのですが、同業者の様子を見ていると、費用対効果を考えて二の足を踏んでしまうケースが多いようです。

ジャパンナレッジさんには、英和の充実を強く切望します。


研究社オンライン・ディクショナリー(KOD)
(有料)

西練馬さんは、

元々の目的上、URLを直接叩いて項目を検索できるサービスのみ扱っています(今のところは)。 

という理由でKODを除外されていますが、少なくともEBWin4からはアクセスできます(IDとパスワードの入力は必要)。

こちらも今さら詳しく語る必要のないサービスでしょう。英和辞典のラインアップと年間費用を考えれば、PC上に辞書環境を作ることが難しい今、利用価値はきわめて高いと言えます。基本サービスだけでも

・研究社英和大辞典 第6版
・研究社和英大辞典 第5版
・リーダーズ英和辞典 第3版
・英和中辞典 第7版
・ルミナス英和辞典 第2版

が使えるうえに、新語も追加されているわけですからね。

ただし、新語の追加ペースは、英語圏のOxfordやWebsterと比べると、あまり早くはありません。慎重な態度ということなのでしょうが、昨今の状況を考えれば、たとえばOEDがやっているように「Draft」などのラベル付きで暫定的に収録する、なども検討していいのでは、と思います。

というところで、体力も気力もゼロになりましたw 馬屋で休憩しないと。