# EBWin4の「全ての項目」と「うんのさん」の用例

しまった……。5月は1回しか記事を書かなかった。

ということで、6月になってしまいましたが、気を取り直してEBWin4の機能と、「うんのさん」こと『ビジネス技術実用英語大辞典』の話をします。

今週、フェロー・アカデミーの上級クラスも授業が始まりました(中級より約1か月遅く開講)。その初回で扱った英文は、こんな書き出しでした。

Few Americans were willing to consider military action against the Japanese in 1940 and 1941, and most considered Asian affairs to be of secondary importance to the events in Europe.

ここに出てくる "the Japanese" を「日本人」ではなく「日本」と訳してもいいのか――そんな質問がありました(翻訳答案を提出するとき、疑問点なども書くように伝えてあります)。

この質問、ごもっともですよね。もちろん、文脈から考えれば「日本」で問題ないと思うのですが、念のために根拠を求めてみます。

ふつうの辞書だと、「the Japanese は日本人の全体を指す」といった説明はあるものの、実際に「日本」と書かれているも用例はありません。ここで「日本人の全体なら "日本" という訳でいいでしょ」と判断して終わってもいいのかもしれません。「もう少し根拠がほしい」と考えるかどうかは人それぞれ、あるいはケースバイケースでしょう。今回は、もう少し調べてみました。自分の翻訳ではなく、授業で説明しなければならないという理由もあるからです。

ここで求める情報は、「豊富な用例と、信頼できそうな対訳」です。そういうときの拠り所といえば、何といっても「うんのさん」です。

プロジェクトポトス:
『ビジネス技術実用英語大辞典V6 英和・和英』

そして、「うんのさん」を使うなら、辞書ソフトはEBWin4がおすすめです。

EBWin4

お持ちの方は、下の図のように検索してみてください(画像クリックで拡大できます)。

ポイントは以下のとおり。

  • 「うんのさん」を登録すると本体用例集の2つが登録されます。上の図では「用62」*1となっています*2
  • 今回検索するのは、そのうち用例集のほうです。本体のほうを検索すると、用例が重複して検索されるので。
  • 検索オプションは「全文検索」。「うんのさん用例」ならそれほど時間はかからないはずです。
  • いちばんのポイントは、右下の検索オプション。[全ての項目]にチェックを入れ、[項目毎]が見えている状態にします。[連続]となっている場合はそれをクリックすると[項目毎]に切り替わります。

こうすると、見つかった用例(149件)がすべて右ウィンドウに表示されます。

ここからは、EBWin4上で見てもいいのですが、ぜんぶ選択(Ctrl+A)したうえでWordファイルとかテキストファイルに貼り付けるのがおすすめ。the Japanese を使った例文集ファイルが作れちゃいます。

この149件の用例を見ていくと、たとえば以下のような用例と対訳が見つかります(太字と赤太字は高橋)。

◆ Another field in which the Japanese are coming on strong is finance. 日本が強くなって[台頭して, 幅を利かせて]きているもう一つの分野は金融である.《一昔前の話》
◆ Now the Japanese fear a boomerang effect as Dynamic Asian Economies steal customers from them, especially in consumer goods. 今では日本(人)は, ダイナミック・アジア経済地域に特に消費財の客を奪われることになりブーメラン効果を懸念している.(*合弁などで日本企業が教えた技術がすぐに習得され自業自得的な手痛い形で戻って[跳ね返って]くる)
◆ The famed Navajo Code Talkers, the elite Marine unit whose unbreakable code stymied the Japanese in World War II, fear their legacy will die with them. 自分たちの破られることのない[解読不能な]暗号で第二次世界大戦中に日本を窮地に立たせた, エリート海兵隊部隊である有名なナバホ・コード・トーカー[ナバホ語暗号通信士]は, 自らの遺産が自分たちと共に消滅することを懸念[憂慮]している.
The Japanese always wait as long as possible to do as little as possible on these things. 日本人[日本]は, こういった事柄に関してはできるだけやらないで済むよう可能な限り待つ[意訳 延ばす, 先送りする]のが常である.

「日本」と訳せるケースもあれば、どちらでもよさそうなケースもあることが、実際の用例で確認できました。

どの英和辞典でも、用例に付けられている訳文は基本的に信頼できるはずですが、特に学習英和だと、学習者に対する配慮としてやや直訳寄りということもあります。その点、「うんのさん」は私たちと同じ現役翻訳者のお二人が訳を付けているという一点が安心材料になります。

そして、その「うんのさん」の用例は、EBWin4でこうやって使うとさらに強力に活用できるわけです。

なお、EBWin4の表示オプション[全ての項目]と[連続/項目毎]の機能については、旧ブログに以下の記事があります。あわせてどうぞ。

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # EBWin4 4.4.2、「連続」と「全ての項目」の違い~英和・和英

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その1

禿頭帽子屋の独語妄言 side A: # EBWin4の新機能「全ての項目」表示~その2

 

*1:現在販売されている製品はV6つまりバージョン6ですが、マイナーアップデートされて中身は6.2になっています。

*2:ボタン名はデフォルトではなく私が変えています。