昨日から今日にかけて、物書堂版『研究社 新和英大辞典 第5版』の物書堂アプリ版から気づいたことを書きましたが、同じ物書堂から昨年末にリリースされた『ジーニアス英和大辞典』(G大)も、どうやら最新らしいことが分かりました。www.monokakido.jp
こちらのほうがリリースは先だったので、キャンペーン割引販売は明後日1/7までです(通常価格 10,000円→特別価格 7,000円)。
具体的に変わったのは、「用例プラス」が追加されたことです。しかも、学習英和である『ジーニアス英和辞典 第5版』(G5)より増えています※。
※私が比較に使ったのはLogoVista版のG5です。それより後に出た、たとえば物書堂版G5は未確認ですが、LogoVista版と同じらしいご報告をいただいています。
例として、naiveを引いてみます。
まず、通常(EPWING)のG大から。EBWin4の画面です。
ご覧のように、用例は語義1、2、3にそれぞれ1つずつあるだけです。
これが、物書堂アプリではどうなったかというと――
「用例プラス」という囲み部分があります。これが新しく追加された用例です。Don't be so naive. というのは、なかなかいい用例だと思います。
そして、用例プラスが導入されたのは、学習英和G5からですが、そちらの画面がこれです(LogoVista版より)。
「プラス」の欄がそれなのですが、ご覧のように追加用例は1つだけです。G大にある
a naive kid from the suburbs 郊外から来た世間知らずの子供
という用例はありません。
G大と学習英和Gシリーズを時系列でまとめてみると、こうなります。
- 『ジーニアス英和大辞典』書籍版発行(2001年)
- 『ジーニアス英和辞典 第5版』発行(2014年)
- 『ジーニアス英和辞典 第5版』用例プラス付きリリース(2016年前後?)*1
- 『ジーニアス英和大辞典』物書堂アプリ版リリース(2021年)
ところが、用例が増えて現時点で最新版になったということが、どういうわけか物書堂さんのリリースページも含めて、どこにも書かれていません。マーケティングとして非常にもったいないと思うのですが、物書堂さん?
これって、PC版やアプリ版といったデジタルメディアの辞書に「まえがき」や更新履歴が載らない状況とも少し似ている気がします。もちろん、辞書ユーザーの圧倒的多数はそんな情報、必要としていないのかもしれませんが、でも、そこんところが気になる、知りたい、辞書コンテンツの差別化要因になる、という層は一定数いるはずなんですよね。
これって、もしかすると「辞書文化」が未成熟だということなのか。でもまあ、その辺は、英語圏の辞書でもデジタルになってからは十分とは言えないかも。
【1/5、15:45追記】
すいません、G大の製品リリースページではなく、製品案内のほうには更新情報があるというご報告をいただきました。こちらです。www.monokakido.jp
アプリ版には約18,000件の用例(用例プラス)と、約10万点の発音音声が追加されています。
それでもやはり、製品の中に更新情報として載せておいたほしいですよね~。
【1/6、17:45追記】
こちらも、関山先生から補足情報をいただきたましたので、追記しておきます。
まず「用例プラス」ですが、私は「G5から」と書きました。これ、手元のLogoVista版で確認したからなのですが、電子辞書端末(関山先生は「専用機」と書かれます)では、G4(2008年頃)から追加されているそうです。そのときの追加分は30,000用例だったそうです。
このように、電子辞書端末に目を転じてみると私が知らないことばかりで、
専用機のG大に入っている用例プラスは,2008年の機種は30000用例,最新機種では58000用例です。アプリ版G大に搭載の18000用例というものは専用機にはありません。公称数値が正しいのであれば,最新の物書堂アプリ版G大よりもG4初搭載の2008年度の専用機の方が追加用例数としては多いことになり,不思議ですね。
ということです。プラットフォームによって、また時期によっていろいろみたいですが、そうしてみると、今回の物書堂アプリ版はけっこう絞ってきたのですね。
*1:2016年というのはLogoVista版のリリース年です。電子辞書端末では、もしかするともう少し早くから収録されていたのかもしれません。未確認です