# 今年のシンポジウムで私が伝えたいこと(の一部)

前回の記事でお伝えしたように、「翻訳フォーラム・シンポジウム2023」は現在お申し込み受付中です。

「翻訳フォーラム・シンポジウム2023」― Peatix

翻訳フォーラムは不定期にセミナーなどを開催していますが、なかでも「シンポジウムは」1年に1回開催してきた最大のイベント。午前中から夕方までえんえんと、「翻訳のコアになる部分について考える」会です。

今年のテーマは「ことばと向き合う」としましたが、これだとピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。また、具体的な内容を見ると、なんとなく「文法」に寄っているようにも感じられます。

そこで、私がこの日お伝えしたいことを、一部だけ書いておこうと思います。

第1部では「文法」の基本を取り上げ、第3部では「翻訳者として辞典からどんな情報を読み取ればいいか」ということを説明します。

「ことばと向き合う」のは、私たち翻訳者にしてみれば当たり前すぎることかもしれません。翻訳しているときに限らず、日々「ことばと向き合っ」ていると、いろいろなことが目につくはずです。

ついさっきも、毎日新聞の「毎日ことばplus」が発信している情報が目にとまりました。

salon.mainichi-kotoba.jp

ことばに関するおもしろい話(校閲者の視点が多い)を読めるので、私もこのサイトのFacebookとTwitterをフォローしています。

今回は、こんな記事でした。

salon.mainichi-kotoba.jp

(全文を読むにはログイン/サインアップが必要ですが、無料です)。

もちろん「おもねって」のほうが正しいわけですが、同サイトのアンケートでは「おもねている」を選んだ人が2割いたそうです。

では、正解を選べた方、その理由は説明できますか? 記事中でも理由までは説明されていません。こういうとき、以下のように説明できれば完璧です。

終止形(言いきりの形、辞書形)は「おもねる」で、これはラ行の五段活用の動詞。つまり「おもね-ナイ」「おもね-マス」「おもね。」「おもね-トキ」「おもね-バ」「おもね-ウ」と活用する。「おもね-て」はラ行から外れているが、これは音便という現象が起こっているだけで、連用形の一種である。一方、もし「おもねて」と言えるとしたらナ行の五段活用ということになり、「おもね-ナイ」「おもね-マス」「おも。」「おも-トキ」「おも-バ」「おも-ウ」と活用することになってしまう。

いくつか文法用語が出てきました。文法用語を使えれば、こういう

ことばのいろいろな現象

を簡潔に説明しやくなるということです。

逆に、こういう説明を読んで/聞いてすんなり理解できないと、その現象を理解するのにもっと遠回りしなければなりません。

翻訳者は、英語(あるいは自分が扱いその他の言語)の文法についてはそれなりに詳しくても、こと日本語になると、こういう文法用語や文法概念が意外とおろそかになっているようです。特に、翻訳学習中の皆さんを見ていると、その傾向が顕著です。たとえば、翻訳の基本的なコツとして

品詞を転換する

という話はよく聞くと思いますが、これも英語と日本語の「品詞」のことをきちんと分かっていないと、不十分な理解で終わってしまい、実際の翻訳に活かしきれないことになります。

つまり、文法というのは、翻訳するとき、もっと広く「ことばと向き合う」とき、有効な武器になるということなのです。

第1部の「『文法』の基本」では、このように「ことばと向き合う」ための手段になる文法についてお伝えするつもりです。そして、第3部では、そういう情報を辞書からどう読み取るかという話につながります。

右手に辞典、左手に文法

というところでしょうか、いや、これじゃ、手がふさがっちゃって訳文が書けないかw