タイトルは普通ですが、先日の「ブロッコリー」と同じく、宮脇孝雄さんの本を再読していて思いついた話です。
前回は『翻訳の基本』でしたが、今回はその続編『続・翻訳の基本』から。
翻訳者のコンピュータには、聖書とシェイクスピアの電子テキストを入れておくことをお勧めする次第である。
同書第Ⅰ章「翻訳力をつけるには」のうち、翻訳における調べものの大切さを説いたパート1「物知りの友人」にある一節です。
これはもう、今さらというくらいに当たり前の話なのですが、では具体的にどんな「電子テキストを入れて」おけばいいのかをご紹介しようと思います。
聖書もシェイクスピアも、ネット上でちょっと検索すれば、原文・訳文ともすぐに見つかります。
聖書のほうは、Wikipedia の関連プロジェクトであるWikisourceが手頃でしょう。
Bible - Wikisource, the free online library
聖書 - Wikisource
念のためですが、ひと口に聖書といっても、英語版には相当数のバージョン、翻訳版だけでも文語版から各種口語版までいくつかのバージョンがあります。上記Wikisourceページからは、英語で17バージョン、翻訳で旧約4バージョン、新約9バージョンのテキストを読むことができます。
2018年に出た新しい版などはさすがにネット上のテキストになっていないので、1冊くらいは紙で持っておくといいでしょう。
シェイクスピアも、
William Shakespeare - Wikisource, the free online library
からWikisourceのテキストを読めますが、以下のサイトもおすすめです。
Open Source Shakespeare: search Shakespeare's works, read the texts :|: Open Source Shakespeare
インターフェースがなかなかおしゃれで、トップページから語句を検索できるのがとても便利。
以上のようなサイトをブックマークしておくだけでもいいのですが、ここはやはり、EPWING版を紹介しておきたいと思います。
こちらは、各種テキスト(著作権の切れた)を積極的にEPWING化してくださっている大久保克彦さん――私たちは、敬意を込めて "EPWINGジェダイ" と呼んでいます――のサイトです。
ここにある、以下の2つです。
このデータをダウンロードして、EBWin4などに登録するだけで、調べたい語句を検索し、本文を参照することができます。
「シェイクスピア・パック」には、シェイクスピア全作品のテキスト(Globe版)のほか、語彙辞典(C.T. Onions、Alexander Schmidt)と文法書(E. A. Abbott)までセットされています。語彙を検索してから全文を確認できます。
churchyardという単語を検索し、その出典である The Winter's Tale の第2幕第1場を表示したところです。
ちなみに、このchurchyardというのは、前掲『続・翻訳の基本』で聖書からの引用として紹介されている箇所です。同書では
There was a man dwelt by a churchyard.
となっていますが、実際には途中に他の人物の台詞がはさまっていることも分かります。
「バイブル・パック」の内容もスゴいです。
- ヘブライ語
- ギリシャ語
- ラテン語(ウルガータ聖書)
- 英語(King James Version)
- 日本語(1954年版口語訳)
がセットになっているので、ある語句を検索すれば、その出現箇所をこの5種類並べて見ることができるわけです。まあ、上の3つは読めませんけど^^;
ここでも採用されているKing James Version(KJV) というのが、英語版としては今でももっとも権威のあるバージョンとされています。やや古い英語ですが、だいたい読めるはずです。
iOS版のアプリもあります。次回近いうちに、それもご紹介します。