# 水平と垂直 - ほしいインターフェースはこれじゃなかった

さて、ひとつ前の記事でSDL Trados Liveの画面をご紹介しました。

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[表示]タブにある[水平]と[垂直]を切り替えると、
原文と訳文を縦並び
にできるようになっています。上の状態が[垂直]で、[水平]を選択すると

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こうなるわけです(メニューは、選択している状態のほうがグレーになる)。

でも、この「水平」と「垂直」って、なんか違和感ありませんか? もう一度言うと、

原文|訳文

という横並びの状態が「垂直」で、

原文
訳文

という縦並びの状態が「水平」ということに、インターフェース上はなっているわけです。

でも、日本語で「水平」と言ったら、やはり
――――
という横線とか横方向のイメージ、「垂直」と言ったら、



という縦線や縦方向のイメージではないか、と思うわけです。

ご想像のとおり、これ、インターフェースを英語にしてみると、

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そのまんま Horizontal  Vertical なんでした。

実は、英語の "horizontal" と "vertical" を、そのまま日本語で「水平」と「垂直」にすると、特にものの並び方について言うときは、感覚的にうまく対応しないことがあると前から思っています。

たとえば以下の検索結果をご覧ください。

horizontal stripef:id:yasagure88:20201202134734j:plain

vertical stripef:id:yasagure88:20201202134624j:plain

目が痛い^^;

これを日本語でそのまま「水平縞」「垂直縞」と訳しても通じるかも知れませんが、ふつうは「横縞」「縦縞」と言いますよね?

このように、horizontal と vertical は「水平」「垂直」ではなく、「横」「縦」と訳したほうが日本語のなかではすんなり通ることがあると思うのです。

ちなみに、英和辞典でも「横」という言い方が出てくるものはあり、『ジーニアス英和大辞典』にも、

~ stripes 横縞

という例文がありました。

つまり、Tradosのインターフェースも、

原文|訳文

という並び方はそのまま「横並び」

原文
訳文

という位置関係はそのまま「縦並び」と訳せばよかったのです。

詳しく調べてはいませんが、水平/垂直とhorizontal/vertical の違いについて書いたり言ったりしてる人はとっくにいるに違いありません。でも、ソフトウェアのインターフェースに関しては以前もこういう不思議な訳を見かけたことがあるので、少なくとも IT業界でUI を扱っている人の間では、あまり一般的な認識ではなさそうです。

さて、その縦並びが実現したSDL Trados Live のインターフェース。実は私自身も以前から縦並びをリクエストしていたひとりなのですが、実は「これじゃなかったなぁ」と感じています。

上のスクリーンショットで表示されている原文、もともとはこういう形で、当たり前ですが文と文は続いており、パラグラフ構成もあります。

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Studioアーキテクチャになる以前、2007までのSDL Tradosは、MS Wordをエディターとして使っていたので、こんな画面でした。

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1センテンス =1セグメントであることは今と変わりませんが、それが1行ずつ分断されてはおらず、文と文のつながりはいちおう残っています。しかもパラグラフ構成も保たれています。

もちろん、この画面だって、慣れていなけい人には見にくいこときわまりないと思います。が、なにしろWord上ですから、原文は実は隠し文字になっていて、それを非表示にすれば、

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こんな風に、訳文だけの表示にも瞬時に切り替えられました。

つまり、ベタ翻訳のときの自由さには劣りますが、それでも、CATを使いながら原文のイメージ(文と文のつながり、パラグラフの構成など)を辛うじて保っていられたのです。

それが、Studioアーキテクチャになってからは、原文と訳文が横並びになり、文と文とのつながり意識を持ちにくい環境になってしまいました。他のCATツールもほとんどが同じようなインターフェースをと採用しています。その結果どんな訳文が量産されているかは、ご存じのとおりです。

ちなみに、memoQには原文と訳文を縦並び表示する機能があります。が、memoQではアクティブな、つまり翻訳中のセグメントが縦並びになるだけで、前後のセグメントは横並びのままです。

クラウド版Tradosでは、冒頭にあげたスクリーンショットのように、すべてが縦並びになり、翻訳中のセグメントは

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このようになるわけですが、文と文とのつながりを意識できない点は、実はまったく変わりません。

とまあ、SDL Trados Liveを使ってみた結果、はからずも今さらながらの感想がオチということになりました。