#『研究社 日本語コロケーション辞典』

日本語のコロケーション辞典といえば、同業者の間では『てにをは辞典』がおなじみです。ご存じのとおり、書籍のみの貴重な存在。

電子的に使えるコロケーション辞典となると本当にレアで、私の知る限りでは、LogoVistaの『研究社 日本語コロケーション辞典』しかありません。

私のLogoVistaブラウザーにも入っているのですが、実は活躍する機会が意外と少なく、書籍であろうと『てにをは辞典』に手を伸ばすか、あとはコロケーション検索サイト(少納言、梵天、NINJAL-LWP for BCCWJ など)を調べにいっちゃいます。

実は、この『研究社 日本語コロケーション辞典』は、使い方にちょっとコツが必要です。というか、『てにをは辞典』やコロケーション検索サイトと同じように使おうとすると、たぶん??となるだろうと思います。

たとえば「判断」という名詞について「判断がわかるわからない」って言わないよね? と疑問に思ったとします。

『てにをは辞典』やNINJAL-LWP for BCCWJ なら、そのまま「判断」を引けば見つかります。『てにをは』だとこんな記述です。

▲が 甘い。遅れる。遅い。混乱する。定まる。つきかねる。つく。停止する。できない。成り立つ。鈍る。外れる。働く。間違っている。揺れる。正鵠を得ている。ぴたりと当たる。〈中略〉▲を 後回しにする。誤る。〈中略〉▲に 余る。苦慮する。〈中略〉▲の 基準。根拠。〈中略〉▼相反する、意地悪い。〈中略〉▼する 専門家が。読者が。〈後略〉

このように、助詞とそれに続く表現の共起、共起する修飾語、サ変動詞になった場合……などと続くのが『てにをは』の一般的な形です。

少納言と梵天なら、「判断が」と助詞まで含めて検索すれば、後に続く表現がわかります。NINJAL-LWP for BCCWJ なら、「判断」だけ入力して「……が」「……を」などと助詞別に確認できます。

さて、これと同じように『研究社 日本語ロケーション辞典』を使おうとしても、何もヒットしません。

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原因は、検索方法がデフォルトの「前方一致」になっていることです。この辞典で「判断が○○」とう形を調べたいときは、「逆引き」を使う必要があります。

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こうすると、「判断」と共起する動詞や修飾句が検索結果に並びます(五十音順なので、動詞も修飾句も一緒に)。

「まえがき」やインデックスを見ると分かりますが、実はこの辞書、「判断」とか「判断力」「番地」「パンチ」……のような名詞は見出しになっていません。上の検索結果でも見えているように、「違う」「違える」「付く」「付け加える」のような動詞、「適正」「適切」のように形容動詞の語幹にもなる名詞、などが見出しになっているだけです。

たとえば、インデックスから「に」の項を見てみると、これだけしか並んでいません。

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一方、『てにをは辞典』で「に」の項を見ると、
 に【荷】
 にあい【似合い】
 にあう【似合う】
 にあがる【煮上がる】
 ・
 ・
 ・
と並んでいるので、そもそも辞書としての作り方が最初っから違うのだと分かります。

ということで、LogoVista版の『研究社 日本語ロケーション辞典』を『てにをは辞典』と同じように使いたければ、検索方法として
逆引き
を使うということを知っておいてください。

逆に、動詞あるいは形容動詞の語幹から引くのであれば、前方一致でもいいことになるのですが、そういうケースってあるのかしら。個人的には、あまり思い浮かびません。