たまには、翻訳作業に関わることも書きましょうか^^;
産業翻訳のなかでも、スタイルガイド(=翻訳時の表記スタイルを指定するルール集)の分量や細かさは、分野やお客さんによって大きく違います。
先ほど、Twitterで「100ページ超のスタイルガイド」に頭を抱えているという投稿を拝見しましたが、IT系翻訳の世界ではそのくらいの分量のスタイルガイドも決して珍しくはありません。
そんな膨大なスタイルガイドを相手に私がどうしているか、というのを書いておきます。分野や文種によっては、参考になるかもしれません。
分量にかかわらず、案件/客先ごとに指定されるスタイルガイドの内容は、大きく言って次の2つに分類できます。
- 各種の案件に共通するルール
- 案件ごと、または客先ごとに固有のルール
1. に該当するのは、たとえば
- カタカナ語の長音(「メモリー」か「メモリ」か、等)
- カタカナ複合語の区切りはどうするか(中黒を使う使わない、等)
- 文字種ごとの全角半角(英数字は必ず半角、等)
- 漢字とかなの使い分け(「既に」か「すでに」か、等)
- 人名や地名は英語のままか訳出するかどうか、等
といったルールです。一方、2. に該当するのは、これはいろいろあってリストアップしにくいのですが、社内の人の肩書きをどうするかとか、訳文のトーンをどうするかといった指定です。こちらも、事例が増えてくれば 1. に入ってくるわけですが、たいていはそこまで多くありません。ときどき見かける程度です。
膨大なスタイルガイドを頭から読んでいくのは面倒ですし、そもそも内容がすべて頭に入るわけがない(おまけに、複数の案件が並行したりしたら、頭の中のルールをいちいち入れ換えないといけない)。
そこで私は、スタイルガイドのテンプレートを用意しています。スタイルガイドの中から、まず 1. に当たるルールだけを拾い読みして、整理しながらテンプレートに当てはめていくわけです。
テンプレートはExcelでも何でもいいのですが、私は下図のようなテキストファイルを用意しています。
こんな風に整理してから、改めてスタイルガイドを通読し、案件/客先に固有の特殊なルールを追記します。
なんでテキストファイルにしているかというと、私の場合、翻訳後に Perl のスクリプトを使ったスタイルチェックを実行していて、その定義ファイルを兼ねているからです。
上のようにルールを整理して記述した部分の後ろには、正規表現も使ったりしながら、チェックルールを並べていきます。そうすると、実際のファイルはこんな感じになります。
色が変わったりしているのは、秀丸エディタの機能(同じテキストベースのファイルでも、拡張子が違うときは背景色を変える、など)を使っているためです。
上の図でみると、たとえば66、67行目は全角半角の間がくっついている(半角スペースが入っていない)箇所を検出します。69~71行目は、丸カッコ、大カッコ、二重引用符が全角になっている箇所を検出します。要するに、
- スタイルガイドの内容を整理したメモを作る
- チェックスクリプト用の定義を作る
というのを同じファイルでまとめてやっているということです。
Perl スクリプトというのは私の好みなので、同じことはテリーさんのWildLightでもできます。
あるいは、SDL Trados Studio の検証機能(QA Checker 3.0)に定義することもできます(ただし、作業の手間はPerl やWildLightよりずっす面倒くさそうです)。
チェックツールとの組み合わせは、今回の趣旨からはズレてますね。スタイルガイドの細かいルールは、自分なりにテンプレート化してみるといい、というお話でした。
なお、秀丸エディタでファイル形式ごとに背景色を変える設定については、旧ブログに記事があります。