次の日曜日に開催される「辞書の揃え方・使い方 超基本編」、お申し込みは本日までです! 詳細は以下の記事にあるリンクからどうぞ。
また、どんな話になるのかもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
こちらの記事でもお伝えしているとおり、今回は参加特典として「辞書を活用するための用語集」をお配りします。それがどんな内容になるのか、ひとつだけご紹介しようというのがこの記事の趣旨です。
dictionary のことを、日本語では「辞書」とも「辞典」とも言います。これの違いは何なんでしょうか?
ちなみに、ネットで "辞書 辞典 違い" などと検索しても、たいした結果は出てきません。この話は、余録としてあらためて記事にします(たぶん)。
ためしに、お手持ちの国語辞典(国語辞書?)で「辞書」と「辞典」を引いてみてください。おおむね、以下のことまでわかれば十分です。
- 意味はだいたい同じ
- 「辞典」は「辞書」の新しい言い方
- 種類や書名に使うときは「―辞典」が多い
ただし、複数の国語辞典を比べてみると、かなり違いがあることもわかってきます(これについても、特典のさらにおまけとして添付するかもしれません)。ちなみに、わたしがこの記事を書きながらあらためて引いた国語辞典は、およそ20点でした。
今回の話で参考になりそうなのが『三省堂国語辞典 第八版』です(全体の記述としてはもっと良さそうなのもある)。
辞書
①ことばをたくさん集めて一定の規準で〈整理/分類〉し、発音・表記・意味・用法などを説明した本やソフトウェア、機械。「―を引く」⇨辞典①。
②〘情〙 〔コンピューターで〕かな漢字変換に使う、かなと漢字の対応関係などを示したデータ。
③こういう ことばがある、それは こういう意味だという、人(々)の頭の中にある考え。心的辞書。「余の―に不可能という文字はない 〔=ナポレオンが言ったことにされている文句〕・―的な 〔=一般に使われる〕意味」
辞典
①辞書。 〔「事典」と区別して「ことばてん」とも読む〕 「 辞典 」は「国語辞典」など複合語で よく使われる。「国語辞書」とも言うが、書名は「辞典」が多い。「 辞書 」は意味が広く、パソコンの かな漢字変換に使うデータも ふくむ。「国語辞典などの辞書」のように表現しわけることもできる。
②事典。「医学大―」
(赤字は引用者)
まず、「辞書」について②と③をしっかり載せているところが、さすが三国。この両方または一方を載せている国語辞典は少数派でした。そして、「辞典」の解説がやはり秀逸です。「国語辞典」という使い方を用例として載せている例はほかにもたくさんありますが、
「国語辞書」とも言うが、書名は「辞典」が多い
というひと言がいい。そのうえさらに、
「国語辞典などの辞書」のように表現しわけることもできる。
ここまで書いているところが、これはきっと飯間先生でしょう。
さて、ここにもう少し、わたしなりの解釈を加えたいと思います。
「辞典」は「国語辞典」や「英和辞典」のような分類に、そして『三省堂国語辞典』や『ウィズダム英和辞典』のような書名に使います。このうち、分類レベルなら「国語辞書」や「英和辞書」と、言えなくもありません。でも、書名のなかの「辞典」を「辞書」に置き換えるのは、少なくとも現代では違和感が大きい。
これはどういうことかというと、歴史的には「辞典」があとから登場したのだとしても、現代の用法としては、
「辞書」が抽象
「辞典」が具体
ということになってきたのだろうと考えています。だから、consult a dictionary に当たる行為は「辞典を引く」より「辞書を引く」のほうが自然ですし、12/8 のセミナーのタイトルも「辞典」ではなく「辞書の揃え方・使い方」になっている。
一方、書名になるといずれも具体的な形をとっているので『日本語新辞典』とか『数のつく日本語辞典』とかになるわけです。
「国語辞典」のような分類レベルの話は、抽象・具体の度合いがその中間でしょう。だから「国語辞典」が普通だけど「国語辞書」とも言えないわけではない。
「辞書」と「辞典」について、こういう説明をしている辞書/辞典は、わたしが確認できている限りでは、まだありません。個人的にはなかなかいい観点だと思っているのですが、どうでしょう。
日本語のなかで、こういう〈抽象-具体〉軸で使い分けているのではないかとわたしが考えているもうひとつのペアが、
「企業」と「会社」
です。「海外企業が国内に進出し~」みたいな抽象の話なら「企業」。「株式会社」とか「○○株式会社」になると「会社」。その中間にある「石油会社」のような分類レベルだと、「会社」が多いが「石油企業」とも言う。
類語の使い分け基準に、これと同じような〈抽象-具体〉軸がありそうな部類、たぶんほかにもありそうです。
というわけで、12/8 のセミナーにもぜひご参加ください。