#『校閲至極』日記、その2

昨日始めたシリーズ、その2です。

昨日は「気になったところメモ」と書きましたが、そうとは限らず、単に連想したもろもろのことなども書き綴っています。

「『晩春』原節子の「おじさま」とは」(p.57~)より

これとは別の映画監督の経歴で(中略)関係性が確認できず「大おば」とされたことがありました。

この、ひらがなの「おば」という表記で思い出すのはあれですね。かつてニュースに載った

犯人はおばか

という見出し。疑問符が付けばもっと分かりやすかったところでしょう^^;

「新選組と新撰組、どちらを選ぶか」(p.60~)より

新選組一番隊組長の沖田総司の書いた手紙があります。(中略)自筆の書名が「総二」となっているものがあるのです。(中略)「惣司」と書かれた史料も残っています。

昔の人は、名前の表記にバリエーションがあることも珍しくないですね。沖田総司については、実は読みも2通りあって、本来は「そうじ」のはずですが、1960年代のテレビドラマの影響で「そうし」も広まったという説があります。旧ブログに記事がありました。

baldhatter.txt-nifty.com

「オホークツ海に「空目」注意報」(p.64~)より

人は間違える生き物である。だからこそ日々怠ることなく、訓練された複数の目を生かして、一時でも誤りを減らしていきたいと思う。

さて、この「複数の目」というのは、ひとりの人間の「ふたつの目」のことでしょうか、それとも「複数人の(4つ以上の)目」なのでしょうか。どちらも含めた表現なのかもしれません。

これで思い出したのが、The Lord of the Rings に出てくる、ビルボとガンダルフの会話です(映画版にもありました)。

‘Oh, they may, in years to come. Frodo has read some already, as far as it has gone. You’ll keep an eye on Frodo, won’t you?’
‘Yes, I will – two eyes, as often as I can spare them.’

ビルボが使った "keep an eye" という慣用句を受けて、ガンダルフが "two eyes" と返します。素敵なやりとりです。ちなみに、瀬田貞二による日本語訳はこうなっています。

「いや、いつかは読んでくれる物がいますとも。今まで書いたところは、フロドが読んでくれました。フロドのことは気をつけてやっていただけますね?」
「しかと承知した――この二つの目で及ぶ限り気をつけて進ぜよう」

雰囲気のあるいい訳ですが、英語のしかけは残念ながら再現されていません。ビルボのセリフの最後のところ、「目をかけてやってください」くらいにしておけば、英語どおりのおもしろさは伝わらないまでも、ちょっとだけつながりが出たかもしれません。

「ゲージとケージ カタカナの混濁」(p.67~)より

「パーティション」(partition)が『広辞苑』など複数の辞書に掲載された原音に近い表記ですが、「ティ→テイ→テー」と変化した「パーテーション」という表記も一定度定着しつつあります。

最近も、「エンターティメント」という表記を見かけたばかりで、それはさすがに(少なくとも今は)ないよな~と思いつつ検索したら、こんなサイトを見つけました。

www.tt.rim.or.jp

残念ながら2009年で更新が止まっていますが、リストを見ると、なかなか楽しい項目が並んでいます。再開してくれたら、どんなネタが出てくるのでしょうか。

いや、ただ笑っているだけでなく、こういうリソースを見かけたら、自分がやりそうな間違いをチェックリストに追加しておくとよさそうですよね。