一週間ほど前に2冊まとめて推薦したが、
『英文法以前』についてはもう少しだけ補足しておきたい。
あらためて書くと、この本は現役翻訳者ならうなずくことが多いはずだし、翻訳学習中の方や翻訳歴が浅い方には間違いなく役に立つ。
特に必読なのは
- 第5項 後置修飾
- 第6項 多用される代名詞
- 第8項 無生物主語構文
- 第9項 名詞構文
- 第10項 3つの豊かさをもつ前置詞
だ。
ただし(追記しようと思った肝はここ)、この本は例文も平易だし、あくまでも新書という分量で「原則の概要」を示すにとどまっている。これを読んだだけで翻訳力が上がるわけではない。この本で指摘されていることを実際の翻訳でいくつも実例をこなしながら身につける必要がある。
「無生物主語構文」を勘違いして*1、人間以外が主語のときは何でもかんでも
~では、~により
になっている既訳は後を絶たないし、原文が A of B と書かれているとほとんど機械的に
BのA
と訳してくるケースも実に多い。
「名詞構文」も同様で、いわゆる「原文に引っ張られ」た訳文になりがちなのは、この要因が最も多いんじゃないだろうかと思う。つい今しがたもこんな例を見かけた。
Shared governance structures can help integrate diverse perspectives and ...
共有ガバナンス構造を導入することで、多様な視点や~
この文頭の Shared governance structures も、典型的な名詞句構造だ。それを日本語側でもそのまんま「共有ガバナンス構造」と名詞句にしているから、わざわざ「導入する」と付け加えなきゃいけなくなった。そんなことをせず、「ガバナンス構造を共有すれば~」と訳せば済むところだ。
……という話のエッセンスが、この本の第9項には書いてある。
この本を読んで理解したら、とにかく実践すべし。とはいっても、書かれていることをすべて、特に上に挙げた重要項目をすべて並行して意識するというのは無理な話。ひとつひとつ意識しながらつぶしていくのがいいと思う。Buckeyeさんこと井口耕二さんがよく引き合いに出す、スポーツの鍛錬と同じだ(井口さんは、よく「の」の連続を減らす例を出される)。
順番は人それぞれだが、わたしが考える重要度順でいうと、
- 名詞構文
- 前置詞
- 無生物主語構文
- 修飾語
こういう順番で克服していくといいのかもしれない。
*1:『ロイヤル英文法』をお持ちなら、ぜひそれだけでも再確認しよう。
