前回の「その6」を書いたのは、翻訳祭のオンラインプログラム開始前日でしたが、全日程が昨日で終了しました。そして、本日からはプログラムのアーカイブ配信も始まります。チケット販売は終了しましたが、チケットをご購入になった方は、引き続きアーカイブをゆっくりご視聴ください。
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「えっ通じない? 新潟方言の数々」(p.174~)より
また、「大洋紙」という言葉。これも新潟固有の言い方だそうで、一般的に「模造紙」と呼ばれる紙のことです。(中略)この模造紙、地方によってさまざまな呼び方があり、熊本や佐賀では「広用紙」、愛媛で「鳥の子用紙」など――。
ここに出てきた「鳥の子用紙」という言い方は、愛媛出身の家内から聞いたことがあります。
「大洋紙」(たいようし)は日国にも載っていませんね……。Wikipedia日本語版によると
「大」きな「洋紙」に由来するとされる。
ということですが、どうなんでしょう。
「広用紙」は、これで「ひろようし」と読むんだそうで(上記の引用箇所ではルビ付き)、やはり日国にも載っていません。
私が直接聞いたことのある「鳥の子用紙」は、「鳥の子紙」の形でどの国語辞典にも載っています。ただ、
雁皮・ミツマタを主材料とした上質の和紙。鶏卵の殻のような色をしていることからの称。【大辞林 四】
とあるので(赤字は引用者)、学校の自由研究なんかに使うあの「模造紙」とはちょっと違い気がします。Wikipedia日本語版には「襖などに使われる鳥の子紙に由来する」と書いてあって、その出典もあるそうなので、どこかでズレた使われ方をしたのかもしれませんね。
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「国が違えば昼食も朝食に」(p.183)より
エルミタージュ美術館にあるベラスケスの作品『昼食』について、こんな話が続きます。
調べてみると、原題にあるスペイン語の「アルムエルソ」は朝食とも昼食ともとれる語のようで、どちらに訳すかは文化の違い、あるいは美術界の事情によるものだろうか。
これはもう、スペイン語の辞典に当たるしかありません。アルムエルソは almuerzo だそうなので、小学館の『西和中辞典』で引いてみます。
1 昼食;昼食会.
2(午前中の)軽食;(遅い)朝食.
ということなので、なるほど、食べる時間帯とかでも違ってきそうです。
この話でまっ先に思い出したのが、ホビットたちの食事の習慣。ホビットは1日に6回食事をとるそうです。ピーター・ジャクソン監督が映画化した The Lord of the Rings の第1作 The Fellowship of the Ring では、breakfast, second breakfast, elevens, lunch, afternoon tea, dinner または supper となっています。ただし、second breakfast という表現も、1日に6回という回数も、原作者トールキンの作品では具体的に言及されていません(elevens は出てきます)。
それからもうひとつ。breakfast と lunch を兼ねた食事のことを英語では brunch といいますが、これはもちろん breakfast + lunch でこういう造語になったわけで、blunch と綴るのは間違い。
そして、この「ブランチ」に当たる日本語は
あひるご飯
だと思っていて、ことあるごとに人にはそう話しているのですが、なかなか広まってくれません。「ブランチ」が定着しているからかもしれませんけど、「あひるご飯」、なかなかいいと思いません?
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これは記事の内容とまったく関係ありませんが、記事を書くためにジャパンナレッジにアクセスしたら、
いつの間にか、このように「~ログイン中」と表示されるようになってました。これって、最近ですよね? 地味な変更ですが、助かります。