# メッセージを着信する……?

正月ネタは終わりですが、引き続き「辞書を引いてみた」シリーズです。

ある小説――映画も公開されて話題になっている有名作です――を読んでいたら、

スマホがメッセージを着信し、〈人物名〉はドキッとした。

(太字は引用者)
という文が出てきて、ちょっと驚きました。「着信する」は自動詞だろうから、

スマホにメッセージが着信し

じゃないの? と思ったからです。全体的には、素人くさかったり今風だったりはせず、それどころかぐいぐい読ませる筆力のある文章なので、ここだけが特に奇妙な印象でした。

そうなると、私が自動詞と思い込んでいたのが間違いで、こういう他動詞用法もあるのだろう……と考えて辞書を引いたわけです。

まず、前提となる知識です。以下の辞書には自動詞か他動詞かを区別する情報(ラベルなど)は基本的にありません。

  • 日本国語大辞典
  • 広辞苑
  • 大辞林
  • デジタル大辞泉

つまり、調べるなら小型の国語辞典ということになります。結論から言うと、「着信する」を他動詞としても扱っている国語辞典は皆無でした。とはいえ、「メッセージを着信する」はわりと最近の使い方っぽいので、これだけで判断するわけにはいきません。

昨日も使ったコーパスサイトNINJAL-LWP for TWC(筑波ウェブコーパス)では、こんな結果です。

「~着信する」という言い方はそれなりにあり、用例は「電話」の時代からありますいずれも、現代的な媒体からの引用なので、やはり新しい言い方ではあるようです。これから出る国語辞典では扱いが変わってくることも考えられます。

考えてみると、対語である「発信する」は他動詞としても使えるので、そこから「着信する」の他動詞用法も自然発生したのかもしれません。

日本語の自動詞・他動詞については、たびたび疑問に感じることがありますが、やはり境界線はあいまいなことが多く、正誤をきっぱりと断じることはできないのだなあという思いが年々強くなっています。