# 三上

「みかみ」ではない。象の鼻が長い話も関係ない。「さんじょう」と読む。

ただし、普通には変換候補に出てこないかもしれない。ウチの環境では変換できたが、それはATOKに精選日国が入っているからだろう。

きっかけは、私のこのツイート。

これに、こんなレスをいただいた。

なるほど、うまいこと言うなあ、考えることは昔も今も一緒だなぁと思って、さっそく国語辞典を引いてみたが、「馬上」は馬の上、「枕上(ちんじょう)」は寝ていること、くらいしか出てこない。

が、「厠上」で見つかった。「しじょう」と読む。

厠(かわや)の上。便所の中。考えをまとめたり、文章を練ったりするのに適しているという三上(さんじょう)の一つ。

こちらは日本国語大辞典(ジャパンナレッジ版)からの引用だが、精選日国@コトバンクにも載っているので、ネット検索するだけでも見つかる。

ちゃんと、まとめた言い方まであって、その「三上(さんじょう)」が今回のタイトルというわけ。以下も日国(JK)より、「さんじょう」の語釈と用例。

文章を練るのに、最も都合のよいといわれる三つの場所。馬上・枕上(ちんじょう)・厠上(しじょう)をいう。
*蠡測集〔16C中頃〕「三上吟と云は、鞍上、枕上、厠上ぞ。詩を吟ずるには、或は馬の上にて能あんずる人もあり、又寝て能案ずる人もあり、かわやなどにてあんずる人もあり、随其宜、これを云ぞ」

おもしろいなあ。馬と枕なら「上」というのも分かるんだけど、厠でも「上」なんだ^^;

もう少し用例を見てみると、芥川なんかが「馬」のところを書き換えて使ったりしている。

*大導寺信輔の半生〔1925〕〈芥川龍之介〉五「几上、車上、厠上(シジャウ)、─時には路上にも熱心に本を読んだことを覚えてゐる」

そっか。『大導寺信輔の半生』だって読んでるはずなのに、これは記憶に残ってなかったんだ。上のレスをくださった方も、開高健のエッセーか何かで読んだとおっしゃってた。芥川ついでに青空文庫も全文検索してみると、

「三上」という言葉がある。枕上鞍上厠上合わせて三上の意だという。

という寺田寅彦の引用も見つかる。「馬上」じゃなく「鞍上」も多いらしい。

いつもながら、つくづく教養が足りんなあ、自分。