前の記事に追加するつもりでしたが、記事を改めました。
私の手元には、最新版である『記者ハンドブック 第13版』のほか、第7版から第12版までの記者ハンがあります。
11版(2008年)以降は、フリーランスになってから版が変わるたびに買っていたものですが、第7版~第10版は、すこし前に「差別語」の扱い方が気になって、その変遷を知りたくて買いそろえたものです。
以下、赤字は引用者。
最も古い第7版(1994年)には、「きしょう」の項も「しんしゅのきしょう」の項もありませんでした。
第8版になって、以下の項が追加されます。第8版の発行は1997年です。
きしょう
気性〔気立て〕気性が荒い、進取の気性に富む
〔注〕「進取の気象」ともいうが本社は「気性」を使う
しかし、「進取のきしょう」の項はまだ登場しません。
これ以降、第9版、第10版、第11版、第12版、そして最新の第13版まで、「きしょう」の項の記述は変わりません。
第12版で、「しんしゅのきしょう」の項が加わります。
しんしゅのきしょう(進取の気象)
→ 《統》 進取の気性
《統》は「統一」の意味で、つまり「気性」への書き換えが推奨されているということです。第12版の発行は2010年でした。
前の記事で書いたように、『広辞苑』で「進取」の用例が「進取の気象」から「進取の気性」に変わったのは、第六版から第七版に改訂されるタイミングでした。第六版の発行が2008年、第七版の発行が2018年です。その10年間のどの時点で「進取の気性」に書き換えられたのかは不明ですが、「しんしゅのきしょう」が追加された記者ハン第12版の発行年である2010年と、大ざっぱには符合します。
これ以上の細かい検証もまだいろいろ可能かもしれませんが、ひとまず、
- 今から20年少し前に「進取の気性」もだいぶ容認され始めた
- おおむね今から10年くらい前に「進取の気象」より「進取の気性」が優勢になった
と考えられそうです。
だからどうした、という類の話。おもしろかったから、いいのだ。