# では、Linguee はどう?

ひとつ前の記事で、「英辞郎は辞書ではなくデータベースだ」という話をしました。

baldhatter.hatenablog.com

「データベース」ということは、たとえばLingueeなどの同類です―と書こうとして、とんでもないものを見つけたので、ついでにその話もしておきます。

www.linguee.jp

これ、Lingueeへのリンクなんですが……。

なんと、こちらさんは、英辞郎と違って堂々と「英和/和英辞書」と名乗ってらっしゃるのですね。驚き呆れました。

運営会社Linguee GmbHの創設は2008年ということですが、英語を検索していて、"謎の英日対訳集" がヒットするようになったなあと気づいたのは、その数年後くらいからだったと記憶しています。

実際の翻訳業務で使われた原文と思しき訳文が、法的根拠は不明ながら、
対訳データベース
として蓄積されていて、それを検索しているらしいということはすぐにわかりました。でも、個人的には、Lingueeで有益な情報に当たったことは一度もない、というのが率直なところです(今ではもう、Chromeの拡張機能を使って、検索されないように除外設定しています)。

それが、いつの間にか「辞書」を名乗っていたとは……。

 

前記事で書いたように少しずつ辞書っぽい体裁を整えつつある英辞郎が、奥ゆかしくも「対訳データベース」を名乗っているのに比べて、この厚顔無恥はどうでしょう。

この手の対訳データベースが発達・普及するのは、ヨーロッパの言語事情を考えれば理解できますし、それを公開する動機もわかります。が、それを「辞書」と称して、言語を扱う現場に混乱をもたらすというのは、まったくいただけません。

 

たとえば、前記事で例として出した "find" がLingueeでどうなっているかというと、

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こうです。

語法や、整理された用例どころか、品詞すら示していません。これを「辞書」と呼ぶのは、ほとんど詐称です。

まあ、辞書とは何かをよくわかっていなくても、ここまで適当だとアテにする人もいないと思いますが……。

 

ところで、Lingueeといえば、今では機械翻訳エンジンDeepLの母体としても有名になりました。DeepLの開発と運用には、Lingueeのデータベースが使われているそうです。

ちょっと理由があって、また個人的な興味もあってときどきDeepLの出力を見ていますが、最近おもしろいことに気づきました。

  • everyが入っている文は、ほぼ常に「すべての」と訳される
  • alsoが入っている文は、ほぼ常に「また、~」で始まる

これって、要するにLingueeデータベースに蓄積されている対訳がその程度だから、ってことなんですよね。