イカロスさんの「通訳翻訳ジャーナル」2021年春号が、辞書を含めた「調べもの」を特集しています。
「アンケートから探る翻訳者の辞書事情」(p.52~)は、アンケートに答えただけで何も協力はしていないのですが、
こんなところに名前が出ていました^^
さて、この特集ページの「グラフ1」にこんな注記があります。
ただし、最近は契約すれば複数の辞書が使えるアプリやオンラインサービス、また以前からあるが複数の辞書が入った電子辞書もあるので、その中身もカウントするともっと多いかもしれない。すべてカウントした人は「400冊以上」と回答していた。
「400冊以上と回答していた」人は、ご想像のとおり、私です。本人に聞いたところ
かっとなってやってしまった。後悔している
ということです。
ただ、この書き方はちょっと気になりました。まるで、私がオンラインサービスや電子辞書に収録されているタイトルをすべてカウントした、ようにも読めますよね。
ってか、え? もしかして編集部の人、私の回答をそう理解した? Wさんなら、そんなことはないと思うんですが……。
ということで、私が手持ちの辞書タイトルをどうカウントしているのか釈明しておこうと思いました。
手持ち辞書の数え方は、私が作っている辞書リストを見ていただいたほうが早そうです。こんなリストを作って随時更新しています。
書籍もデータ版もオンライン版もあるので、単位は「冊」ではなく「点」としたほうがいいでしょうね。
(クリックで拡大できます、以下同)
リストに載せる基準は、おおむね以下のとおりです。
- カウントする対象は、①書籍、②PCデータ(専用CD/DVD-ROM、EPWING、LogoVista)およびダウンロードデータ、③アプリ、④電子辞書端末(第4項を参照)、⑤オンライン版(第5項を参照)。
- 同じ辞書タイトルを複数のメディアで所持していても、もちろん点数は「1」。
- 版違いは別にカウントする。
- 電子辞書端末に収録されているタイトルは、それしかなければカウントしているが、それ以外は他のメディアでカウント済み。電子辞書端末のタイトルをすべて数え上げたわけではない(カシオ製品によく入っている辞書以外のタイトルは無視)。
- オンライン版のタイトルについても同様(『日本国語大辞典』とか『プログレッシブ ビジネス英語』、『デジタル大辞泉プラス』など)。
- このほか、EPWINGジェダイ大久保さんが作ってくださったEPWINGタイトルもいろいろあるが(シェイクスピア辞典とか)、それはカウントしていない。
版違いが多いために数が増えているところは、他の回答者とは違っていると思います。
このように、特に小型国語辞典ではそれが顕著です。
それから、類語辞典は平均より多いかもしれず、
その点は翻訳者として正当化できるだろうと思いますが、
こういう、かなり特殊な辞典・事典も入っているので、まあ趣味の分もカウントされているとは思います。
では、いったい翻訳するとき実際に常用している辞書は何点くらいあるのか数えてみたら、ざっと70点くらいでした。グラフ1で言えば「41冊以上」に入ります。
その約70点をさらに分類すると、
ほぼ毎日のように使う辞書……32点
それに次ぐ頻度で使う辞書……38点
です。こうしてみると、それほど多くはないですよね。
その詳しい内容は、次の記事で書きたいと思います。
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さて、以下は通翻ジャーナルのこの特集を見た私の雑感です。
- 回答者数
アンケート回答者が88人というのは、いささか少ないですね。いつも、こんなもんでしたっけ? - 10冊以下が半数
もちろん、単純に多ければいいわけではなく、意味のある10冊をフルに活用しているのならいいのですが。 - 国語辞典のトップが『広辞苑』
全体に、国語辞典はうまく活用されていない印象なのですが、この結果がそれを端的に物語っている気がします。
たしかに、翻訳者として辞書環境を作りにくい時代が続いているとは思います。が、いかんせん、まだあちこちでせっかくの辞書が持ち腐れになっているのではないかなぁという思いをあらためて強くしました。