# 日本翻訳連盟、個人的な回顧

※今回もあらかじめお断り。いろいろと個人名が出てきます。ご本人たちには無断ですが、なにとぞご了承ください。

 

ひとつ前の記事で、日本翻訳連盟(JTF)理事の入れ替わりについて書きました。JTFの「これから」の話です。

ついでといってはなんですが、日本翻訳連盟(JTF)と私個人の関わりを振り返ってみたくなりました。「これまで」の話です。

  • 日本翻訳連盟との関わり合いはじめ 
  • JTF標準スタイルガイド検討委員会
  • JTFジャーナル編集委員
  • 翻訳祭との関わり
  • 理事として
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# 日本翻訳連盟、個人理事の新たな顔ぶれ

※あらかじめお断り。今回は、いろいろと個人名が出てきます。ご本人たちには無断ですが、なにとぞご了承ください。

 

昨日、日本翻訳連盟(JTF)の総会が開かれました。

www.jtf.jp

今年は任期2年の理事改選に当たる年でもあり、特に個人理事の顔ぶれが大きく変わりました。西野竜太郎さん、井口富美子さん、テリー斉藤さんがご退任となります。入れ替わりに、中野真紀さんと小泉志保さん(以上、個人理事)、マイアットかおりさんと小坂真理恵さん(以上、法人理事)が就任します。

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# 有料オンライン辞書あれこれ雑感

今どきの言い方だと「サブスク辞書」になるのかな。年間などの単位で契約するオンライン辞書サービスのいろいろについて、今回は詳しい紹介ではなく、ただのメモ程度に雑感を書いてみました。

Oxford English Dictionarywww.oed.com

いわゆるOEDのオンライン版。伝統的な用例主義と語義分類と語釈、機能とインターフェースの秀逸さ、新語・新語義の収録の早さ、どこをとっても「世界一の辞典」の名に恥じないサービス。そのうち1本の記事にしようと思っています。

以前は年間サブスクリプションで3万円超しましたが、最近の改定で110ポンドになりました。翻訳の分野を問わず、その価値に見合う利用価値があります。

無料版(Lexico)も、もちろん十分に利用価値があります。

あと、初めての人はだいたい100ドル/年くらいで初年度利用できます。本来の料金がなかなか見つからないのは、いつも困ります。

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# みだりに収録す

子どもの頃「みだりに」という言葉を初めて耳にしたとき、「右や左に」を縮めた言葉だと思ったのは、私だけではないと思う。それはともかく――

今野真二先生の『振仮名の歴史』を読んでいたら、この「みだりに」がおもしろい文脈で出てきた。

第4章、明治期の布告・布達に付いたふりがなに関するくだりに出てくる用例だ。

此書ハ、御布告及ビ日誌新聞等ノ語中ヨリ童蒙ノ解シ難キ文字ヲ抄出シ告示ヲ以テ音訓ヲ付シ、且ツ、捜索ニ便ナラシムル為ニ仮名ツカイ等ヲ正サズ叨〈みだ〉リニ収録ス

※引用中、カタカナとひらがなの使い分けは出典どおり。また、実際にはいくつかの漢字の右にふりがなが付いているのだが、ここでは、必要なところにだけ〈 〉を付けて表した。太字・赤字は引用者。

この「叨〈みだ〉リニ」の使い方がちょっとおもしろいという話を中心に、『振仮名の歴史』を読んでいてふと思ったことを、いくつか書いてみた。また、今回は基本的に「ジャパンナレッジ」(以下、JK)に収録されているコンテンツをいろいろと渉ってみたので、そういう話でもある。

japanknowledge.com

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# タイムライン上の「左/右」と「前方/後方」

同業者が、 Facebookで「セキュリティを左にシフト」という言い方を話題にしていました。英語では shift left security、shift left DevOps などのように使われています。

「左にシフト」というと、IT のコンテキストでまっ先に思いつくのはビットの操作ですが(1または0を左にずらす)、ここではまったく違う話。ざっくり書くと、「開発プロセスの早い段階からセキュリティを実装すること」です。

つまり、この言い方のベースにあるのは、「タイムラインが左から右に進んでいる」というイメージなんだろうと思います。

過去→→現在→→未来

こうですよね。

で、この話から私がさらに連想したのは、同じくITのコンテキストによく出てくる前方」と「後方」、英語のbackwardforwardです。この単語が絡む話は、英語でも日本語でもかなり混乱があったりします。

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# "インフォ" のないインフォグラフィック

SDL Trados Studio 2022がリリースされるようです。

www.trados.com

現行バージョンが2021なので、「えっ、もう?」という気分ですが、これまでの製品名の変遷をあらためて確かめたら、

SDL Trados Studio 2009 → 2011 → 20142015 → 2017 → 2019 → 2021

だったので、2014 → 2015 のときも 2 年連続というパターンはあったんでした(といっても、2021のリリースは2020年のうちだったので、完全に2年連続ということではない)。

ところで、上のページには「新機能に関するインフォグラフィック」というリンクがあるので、そっそく様子を見にいきました。

www.trados.com

翻訳された日本語の変さについては、もういちいち指摘しませんが、それにしても何なんでしょうね、この「インフォグラフィック」ページは?

ここまで情報量のない "インフォグラフィック" は初めて見ました。

どのくらい中身がないかというと、引用しながらいろいろツッコもうと思っていたのに、その気も失せたくらい。ティーザーとしての機能をまったく果たしてないでしょう、これじゃ。

ちなみに、現在 SDL Trados Studio を扱っているのは RWS 社。SDL だけでなく、いくつもの大手翻訳ベンダーを吸収してきた、今や業界超々大手の MLV なわけです。

ああ、そうか。ローカライズ業界の残念な現状を如実に表している、という情報だけは伝わってくる "インフォグラフィック" なのか――

 

# 三省堂本店 - 二度目の建て替え

いったん、しおりを挟みます。

ということで、三省堂書店の本店が建て替え工事に入る。今日、閉店ぎりぎりの姿を見にいってきた。

中高生の頃(1970年代)には、ここに建っていた旧本店によく通った。特設サイトの写真にもある、三階建ての建物だった。

jinbocho.books-sanseido.co.jp

なかなか古風で風情のある建物だったが、それだけではなく、記憶のなかの店内はなんとなくうす暗い。

その旧本店にも、最初はたぶん英語の恩師が連れていってくれたんだ思う。

旧本店でよく覚えているのは、ばんばひろふみのエッセイ本サイン会。当時、谷村新司とばんばひろふみが文化放送「セイヤング」のバーソナリティを務めてて、毎週聞いていたから、たぶんその延長線だろう。

今の建物になったのは1981年で、私が大学2年のときだった。大学からは西巣鴨の駅が近かったので、三田線でよく通った。

その頃の本店では、故・天本英世がロルカの詩を朗読するのを聞けたのが幸運だった。

それから、2017年に飯間浩明さんに直接お会いして、翻訳祭への登壇をお願いしたのも、本店の特設会場だった。

まさか、生きているうちに二度目の建て替えに遭遇するとは思ってもいなかったなぁ。