# 日本語の類語辞典のお話

(2021/04/20加筆)

ご存じのように、日本語の「類語辞典」にはいくつか種類があります。専門用語はあるのかもしれませんが、以下、帽子屋流に勝手に3つに分類してみました。

  1. 列挙式。説明なしに、類語や関連をただ羅列するタイプ
  2. 説明式。語句の細かい意味・用法を説明し、違いを示すタイプ
  3. 詳細説明式。語感、語法、違いを2. よりさらに細かく説明するタイプ

1. に該当するのが(以下、順序には特に意味なし)、

  • 大修館『日本語シソーラス 類語検索辞典』
  • 東京堂出版『逆引き同類語辞典』
  • 三省堂『現代語古語 類語辞典』
  • バリューネットワークス『デジタル類語辞典』

などです。2. の代表が、

  • 小学館『使い方の分かる類語例解辞典』
  • 講談社『類語辞典』
  • 角川『類語新辞典』
  • 三省堂『類語新辞典』
  • 三省堂『新明解類語辞典』
  • 三省堂『文章表現のための 類語類句辞典』
  • 研究社『類義語使い分け辞典』

など。そして3.に当たる(と帽子屋が勝手に分類した)タイプとして

  • 岩波『日本語 語感の辞典』
  • 東京堂出版『表現類語辞典』
  • 東京堂出版『日本語の類義表現辞典』
  • 三省堂『類語ニュアンス辞典』

などがあります。

それぞれ、私がよく使っている辞書を中心に、簡単にまとめてみました。

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# イベント告知その2 - 5/16

続いてのイベント告知は、皆さまお待ちかねの
翻訳フォーラム・シンポジウム2021
です!

5/16(日)10:00~17:00

passmarket.yahoo.co.jp

昨年はコロナ禍でやむなく中止となりましたが、今年はオンラインイベントとして復活します(通算8回目)。

何度かの休憩は挟みつつも、午前中から夕方までぶっ通しですので、リアルで開催していた一昨年までと同様、終わる頃には
脳味噌が心地よい麻痺状態
という、あの感覚を味わっていただけるはずです。

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# イベント告知その1 - 4/27

近日予定のイベントについての告知、その1です。

4/27(火)14:00~16:00f:id:yasagure88:20210410194457j:plainhttps://www.jtf.jp/learn/seminar/124

日本翻訳連盟(JTF)は今年で創立40周年を迎えます。

そこで、秋に予定されている翻訳祭(オンライン開催)とは別に、40周年記念としてのイベントをいくつか開催することになりました。

その第1弾が、機械翻訳について考えるこちらのイベントです。

登壇は、東京大学の中澤敏明先生と私。

中澤先生は、昨年出た私の訳書

機械翻訳:歴史・技術・産業

機械翻訳:歴史・技術・産業

 

こちらで、機械翻訳の最新情報に関する解説を執筆してくださいました。また、2019年の翻訳祭でも、機械翻訳に関するセッションをひとつ担当してくださっています。

第1部「訳書を通じて個人翻訳者が考えた機械翻訳」

を私が担当し、

第2部「機械翻訳の現状と課題、可能性」

を中澤先生が担当したうえで、

第3部として、二人でパネルディスカッションを展開します。

機械翻訳に対するスタンスは、個人翻訳のなかでもさまざまです。私は、機械翻訳を全面的に否定する立場ではありませんが、手放しで積極的に導入するつもりもありません。その私からは、『機械翻訳:歴史・技術・産業』を訳しながら考えたことを中心に、個人翻訳者がこれから機械翻訳にどう向き合っていけばいいのか、その手がかり――「答え」は出ないでしょう――を少しでも多く示せればと考えています。

一方、中澤先生は、第2部のタイトルどおり、研究者として機械翻訳の現状と課題を誰よりもよくご存じです。私たち翻訳者にとっても貴重な知見を提供してくれるはずです。

これまでも、翻訳祭をはじめいろいろな場で機械翻訳に関するセッションはありましたが、研究者と個人翻訳者が一緒に登壇した前例はあまりなかったかと思います。

どうぞ、お楽しみに!

なお、このセッションにお申し込みいただくと、拙訳書『機械翻訳:歴史・技術・産業』を割引購入できます。

# 『ジーニアス英和大辞典』をEBWin4で使うときの注意

フェロー・アカデミーでは、私のオンライン辞書講座が、引き続き年に3回くらいのペースで公開されています。

  • 翻訳者のための辞書セミナー ~選び方と読み方を見直してワンランク上の翻訳を!~
  • 翻訳者のための辞書セミナー ~なぜ英英辞典を引くのか?~
  • 翻訳者のための辞書セミナー ~辞書引きから訳文作りの実践へ~

という全3回構成ですが、単独でもご覧いただけるように構成してあります。ただし、全3回セットを順繰りに公開しているので、最近のサイクルで言うと、1番目は終了、2番目が申し込み締め切り、これから申し込めるのは3番目です(3/15申し込み開始)。

www.fellow-academy.com

ご受講くださった方は1回だけ質問もできるようになっているのですが、先日

EPWING版『ジーニアス英和大辞典』をうまくEBWin4(辞書ソフト)で使えない

という質問をいただきました。その質問がごもっともな内容だったので、回答をこちらでも書いておこうと思います。

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# 用語集はテキストファイルに

翻訳案件で用語集が提供される場合、CATツールに組み込まれる場合を除くと、ファイルはほとんどの場合 Excel です。いや、それ以外、見たことないな^^;

これが、単なる英日など二言語フォーマットならいいのですが、相手が MLV(Multi Language Vender)だと、対象言語すべてで構成されていることもあります。

こんな感じです。

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このサンプルだと、GR 列まであるので、26+26x6+18=200列もあるわけです。


Excel に詳しくない方のために書いておくと、Excel の列ラベルはA、B、……Zまでいくとアルファベット2文字の組み合わせになってAA、AB、……AZ、BA、BB、……BZ、……ZZと続きます。その先はさらに3文字組み合わせになってAAA、AAB、……となります。さすがに3文字組み合わせは見たことありませんが……。

こういう用語集を提供されたときは、さすがに不要な列を削除するわけですが、そもそも私、Excel 用語集をそのまま使うことはありません。Excel って、検索機能が貧弱だし、フィルターで指定するのもけっこう手間だからです。

どうするかというと、すべてテキストファイルで別名保存し、秀丸エディタで開いて使います。

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# では、どんな辞書を使ってるのか

前の記事で書いたように、「400冊以上」「400点以上」のうち、私が実際に翻訳の仕事で常用している辞書は、だいたいその6分の1くらいということになりました。

では、具体的に

ほぼ毎日のように使っている辞書(32点)

必要に応じて高い頻度で使っている辞書(38点)

はどんなものなのか、参考までにあげておこうと思います(自分の整理のため、翻訳フォーラムの深井さんがよく言う「手持ち辞書の棚卸し」ですね)。

そのほか、前記事では数えませんでしたが、さらに低い頻度だけど手元にあってときどきは使う辞書も追加すると、それが40点ほどありました。

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# 辞書「400冊以上」の中身

イカロスさんの「通訳翻訳ジャーナル」2021年春号が、辞書を含めた「調べもの」を特集しています。

通訳翻訳ジャーナル 2021年4月号

通訳翻訳ジャーナル 2021年4月号

  • 発売日: 2021/02/20
  • メディア: 雑誌
 

「アンケートから探る翻訳者の辞書事情」(p.52~)は、アンケートに答えただけで何も協力はしていないのですが、

f:id:yasagure88:20210224165010j:plain

こんなところに名前が出ていました^^

さて、この特集ページの「グラフ1」にこんな注記があります。

ただし、最近は契約すれば複数の辞書が使えるアプリやオンラインサービス、また以前からあるが複数の辞書が入った電子辞書もあるので、その中身もカウントするともっと多いかもしれない。すべてカウントした人は「400冊以上」と回答していた。

「400冊以上と回答していた」人は、ご想像のとおり、私です。本人に聞いたところ
かっとなってやってしまった。後悔している
ということです。

ただ、この書き方はちょっと気になりました。まるで、私がオンラインサービスや電子辞書に収録されているタイトルをすべてカウントした、ようにも読めますよね。

ってか、え? もしかして編集部の人、私の回答をそう理解した? Wさんなら、そんなことはないと思うんですが……。

ということで、私が手持ちの辞書タイトルをどうカウントしているのか釈明しておこうと思いました。

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